33.休日と勤務日を交換する『休日の振替』

 

 単なる所定休日と勤務日を振替えても『休日の振替』は成立するが、その場合は事前の特定がなくても休日割増の対象でないので、その点『代休等』との違いはない。つまり、あまり意味がない

 休日割増がつくのは『法定休日』だけなので、『法定休日』と振替えた場合のみ、休日割増がつかないという効果が表れるのだ。

 ただ、『所定休日』でも、労働義務がない日という点では従業員にとって法定休日と変わりない。会社と従業員の信頼関係の維持という意味でも、よほどの緊急事態は別として、事前に交換する日を特定して振替えることは当然と心掛けるべきだ。

 この辺は誰に言われるまでもなく、実際に経営に携わる方にとっては常識だと思う。その意味では、所定休日との振替も、全く意味がないということはない。
 

・法定休日との振替

 ここからようやく『法定休日との振替』の話に入る。
 法定休日と勤務日を振替える場合、法定休日が特定されていなければ振替もへったくれもあったものではない。バカにしているわけではなく、振替えようがないのだ。
 

法定休日週1休の場合


 まず、ここでは一般的な、法定休日が『週1回』の会社で考える。
 前回も触れたが、法定休日と、他の週の日を振替えることはできない。
 つまり、法定休日の振替は、同一週内に限られる。

 この場合、振替えられた休日は完全に法定休日となるので、その週の『休日労働』はなかったことになる。従って休日割増も発生しない。

 もちろん、週の法定労働時間『40時間』は変更を受けないので、残り6日間の労働時間如何では『法定時間外』の割増はあり得る
 

・法定休日と所定休日の振替?


 (同一週内の)法定休日と所定休日の振替は可能か。これは結論としては可能だ。

 理論的に言うと、前回紹介したように、
『休日の振替』とは、予め休日と定められた日を労働日とし、そのかわりに他の労働日を休日にすること。

 となっているので、たしかに休日との交換先は『勤務日』限定ということになる。
 従って、『休日の振替』による交換はできない

 だから、これは『休日の振替』とは全く別の問題として考えなければならない。

 『法定休日と所定休日の振替』という以上、週2回の休日が初めから特定されていて、さらに2つの休日のうち『法定休日』も特定されていることが前提だ。

 ただここで『法定休日』は、2回の『所定休日』のうちの1回でもある。この場合は『法定休日と所定休日の交換』ではなく、『法定休日の、他の休日への移動』と考えられる。

 これは、禁止する規定はないので、社内ルールとして可能となっていれば、事前に特定して移動することはできる。

 大体、法定休日と所定休日の『振替』のような話が出てくるのは休日に勤務させる必要がある場合がほとんどだ。それ以外では動機がちょっと考えられない。

 たとえば、週の初日を特定していない(自動的に日~土が1週間になる)土日が休日の事業所で、法定休日が日曜日と定めてあったとする。

 急に日曜の勤務が必要になり、事前に特定してその週末の土曜に法定休日を移動し、日曜に出勤してもらった。この場合、土曜日が法定休日になり、日曜は単なる所定休日となる。つまり、休日割増の必要はなくなる

 ただ、このときは従業員に事前にきちんと説明しておくことは大前提だ。

 

4週4休の場合

 4週4休の運用の困難さ加減は後で詳しく述べるが、ここでは幾多の困難を乗り越えて4週4休を実施している場合について述べる。

 この場合もあらかじめ『毎週日曜』なり『2週目と4週目の土日』なり『1週目の火水木と3週目の金曜』なり、就業規則等で各4週の中での法定休日を特定していなければ『振替えようがない』のは、1週1休の場合と同じだ。

 そこがきちんとなっている場合は、限定された4週間の中で法定休日と勤務日を『振替える』ことが可能だ。

 当たり前のことではあるが、4週4休においても1週間の法定労働時間は40時間なので、これを超せば法定時間外労働となる。

 たとえば、毎週日曜が法定休日の場合、振替でその週の休日がなくなっても4週4休の場合、労基法には抵触しないが、その週の1日平均労働時間が『5時間43分』(40h÷7)以上になると時間外労働が発生する。もちろん、1日8時間を超える日があれば、それは別に時間外労働として計算しなければならない。

 

次 ― 34.振替休日と代休等の給与計算 ―

 

※ 誤字訂正です。('23.03.04)

『・法定休日と所定休日の振替?
8行目  週2課 → 週2回
9行目  2つの休暇の → 2つの休日の

 

 

2023年03月03日