32.休日の振替と代休等

 

 休日の振替については多くの書籍やネット記事でも紹介されているので、今さら付け加える点はあまりない。はずなのだが、これについても誤解されている面があるのでここで論じる。
 

・代休等との違い

 休日の振替にしても代休等にしても、休日と勤務日を取り換えることについては違いはないのだが、あらかじめ交換する日を特定してから取り換えるのが休日の振替で、あらかじめ特定しないで休日に労働させ、代わりに休日を付与するのが代休等ということになる。

 『休日』は基本的に暦日で与えることになっているので、『あらかじめ特定』とは、交換する日の前日以前に特定ということになる。だから、
 

「明日休日だけど、出勤してくれる?代わりにどこかで休みにするから。」

      とか、休日当日の朝になって、

②「今日、出勤してくれ。明日休みにするから。」

      とかいうのはアウト(振替にならない)というのは誰でもわかるが、
      出勤日の朝いきなり

③「今日は休みにするので、明日の休日出勤してください。」

      というのもアウト(同上)
 

である。
 従業員にも生活があるので、こんなことをやられたら予定が立たない。
 従業員がその通りにしてくれたとしても、これらは『休日の振替』にはならないので、その日が法定休日であれば、休日割増賃金の対象になる。
 

・休日の振替とは

 厚労省の説明では、
 『休日の振替』とは、予め休日と定められた日を労働日とし、そのかわりに他の労働日を休日にすること。

 となっている。法定休日とそれ以外の所定休日(以下、単に『所定休日』とする。)は区別されない。つまり正確には、

・『休日の振替』とは、『元々の特定された休日『その休日を移動させた先の勤務日』のいずれか早い方の日の前日以前に、それぞれの日を特定して交換すること。

ということになる。
 

・代休とは

『代休』についても法律上の定義はないが、厚労省の見解では、

・『代休』とは、『休日労働を行わせた場合に、その代わりに以後の特定の勤務日又は労働者の希望する任意の勤務日の労働義務を免除し、休みを与える制度』

としている。要は『休日労働をさせた』ことが重要であり、その事実の後に代わりの休日を与えるのが『代休』ということだ。

 つまり、前記③『今日は休みにするので…』のパターンは『休日の振替』には該当しないことは先に書いたが、『明日』が法定休日だとしても休日労働をさせる『前』に休みを与えているので代休でもない。こうした『代わりの休日』には名前がついていない。

 『休日の振替』でなければ『代休』というわけではないのだ。題名を『休日の振替と代休』としたのはそういう理由だ。

 名前がついていないと以後の説明に支障をきたすので一応『事前代休』とする。例によって検索しても出てこないが、ご了承願いたい。

 さらに、『休日労働』は、法定休日にしかあり得ない。

 『所定休日』に労働させ、代わりにいずれかの勤務日を休日にした場合は、『休日労働をさせ』ていない。この場合、事前の特定がない場合でも『代休』とは言えない(特定されている場合は『休日の振替』)。

 これにも名前がないが、『所定休日の代わり』くらいしか言いようがない。

 ややこしくなってきたのでまとめると、休日との交換は、事前の特定のありなし・法定休日か所定休日か・休日と勤務日のどちらが先になったかで、都合8(2³)通りに分かれることになる。

 余計話がややこしくなってきたので、休日と勤務日の交換を図で表すと次のようになる。
 

・休日と勤務日の交換の種類


交換する日双方の前日以前に特定していた
Yes          No       No
休日の振替    法定休日との交換だった  『所定休日の代わり』
        Yes
      勤務日が先になった
     Yes      No
      代休    『事前代休』


 ここで、休日割増が発生するのが『代休』と『事前代休』の場合だ。
 これは、上の厚労省の見解から考えるとこうなるということで、まだまだ煩雑だという点はさすがに自覚している。ここでの代休等をまとめて『代休』と表現するのが一般に誤りと主張するものではない(厚労省の見解とは違うが、法的定義がないので)。
 

『休日の振替』の要件


 改めて書くと、『休日の振替』の要件は、一般に次の通りとなっている。

1. 就業規則等に休日を振替えることができる旨の規定がある。
2. 休日を振替える前に、あらかじめ振替えるべき日を特定してある。
3. 4週間を通じ4日以上の休日が確保できる。

 ここで、1・2は当然だが、3については、後で述べる4週4休の事業所に限られる。週1休の一般的な事業所で、振替のときだけ『4週4休』ということはあり得ない。普通の『週1休』の事業所なら、同一週内で振替えなければならない(『週○休』は、法定休日の日数)。

 ここは、非常に誤解が多いところなので、十分気を付けてほしい。

 『週1休』の会社で他の週と休日を振替えた(つもりの)結果、その週に休日がなくなったら、必ず休日労働が発生する(普通は週の最終日)ことになるので、休日割増も必ず発生する。

 

次 ― 33.休日と勤務日を交換する『休日の振替』 ―

 

※ 誤字訂正です。

『代休とは』12行目
願いない → 願いたい  '23.03.03

 

2023年02月28日