最低賃金違反だけは何があってもやってはいけない。
このブログの読者の方々の平均的レベルを考えると、何を当たり前のことを気色ばんで力説しているのかと思うだろうが、最低賃金違反は分かりやすすぎるのだ。
どんなに鈍感で不勉強な監督官でも、最低賃金より安い給与明細を労働者が持ってきたら、それだけで法違反の疑いはすぐに指摘できる
すぐに会社に連絡が行き、調査の結果事実であれば、最低でも是正勧告を受け、差額を支払い、その証拠とともに是正報告書を提出しなければならない。あまりないとは思うが、悪質とみなされた場合には下手をすると送検もあり得る。
会社側が反論するとしたらその給与明細が偽造であることを立証する、この1点しかない。
以下のようなこともある。
その事業所では当たり前と言えば当たり前だが、毎年最低賃金が引き上げられるたびに、最も低い方の賃金を、それと同じか上回るように賃上げをし、さらに法定外の職務関連の手当ても支給していた。
しかし、最低賃金が引き上げられたある月、
1人の従業員の賃金を、その前月の最低賃金で支払ってしまったことがあった。
その事業所ではすぐに気づいてその翌月に最低賃金との差額を支払い、違法状態は解消していた。単純ミスだ。
その数か月後、ごく一般的な『定期調査』ということで、監督署の調査があった。
その際、違法状態は解消していたが、上の事実は是正勧告書に記載された。もちろん『是正済み』とはされたが。
その若い監督官は仕事熱心な誠実そうな方だったが、調査の最後に「実は、前の調査でも違反があったんですよ。」と語った。
それについては、代理で出席していた社労士もその先代から聞いて知っていたし、その時の是正報告書の写しも事務所で保管していた。やはり最低賃金関係である。
その時には、その社労士の先代の方がきちんと指導すると答え、対策を文書で詳細に記し、その後何をどう解決したのかの詳細も含めて監督署に報告し、一件落着となったものと思われる。それから何の音さたもなかったようだ。
その時の調査と今回の調査との因果関係は分からない。聞いても教えてはくれないだろうと思い、聞かなかったようだ。ただ、その事務所での監督署の定期調査の頻度から言って、偶然とすれば極めてまれな確率に当たったことになることは事実だ。
この違反があったという『前の調査』だが、何と昭和の時代。今をさかのぼること40年近く前の調査だ。経営者も代替わりして久しいし、当時いた従業員はもうほとんどいない。この監督官が生まれる前と思われる時代の調査だ。
裁判所などは、最近話題になったこともあってか保存期間が過ぎれば何でもポイポイ捨てているようなイメージがあるが、はっきり言って、監督署の調査で何か指摘されたら、それは未来永劫と言ったらオーバーだが、少なくとも半永久的に記録が残り続けると考えてまず間違いはない。
そして、その調査が契機となって、何十年か経過した後(のち)の世での調査につながることもあるのだろう。
地域別最低賃金額は平均1,055円に
'24年10月からの『地域別最低賃金』は、以下のようになっている。適用期日は2024年10月1日~11月1日と幅がある。産業別の『特定最低賃金』の対象者については、その『特定最低賃金』と、『地域別最低賃金』のいずれか高い方が適用される。
1,163 東京 1,023 三重 988 山梨 962 島根
1,162 神奈川 1,020 広島 986 奈良 957 鳥取
1,114 大阪 1,017 滋賀 985 群馬・新潟 956 愛媛・佐賀
1,078 埼玉 1,010 北海道 984 石川・福井 955 福島・山形
1,077 愛知 1,005 栃木 982 岡山 954 大分
1,076 千葉 1,004 茨城 980 和歌山・徳島953 青森・長崎・鹿児島
1,058 京都 1,001 岐阜 979 山口 952 岩手・沖縄・熊本
1,052 兵庫 998 富山・長野 973 宮城 ・高知・宮崎
1,034 静岡 992 福岡 970 香川 951 秋田
全国加重平均 1,055円
・最低賃金の推移
ここでは、各地域代表として、東京・北海道・沖縄の、21世紀に入ってからの最低賃金の推移を記した。
2001 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
東京 708 708 708 710 714 719 739 766 791 821 837 850
北海道 637 637 637 638 641 644 654 667 678 691 705 719
沖縄 604 604 605 606 608 610 618 627 629 642 645 653
2013 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
東京 869 888 907 932 958 985 1013 1013 1041 1072 1113 1163
北海道 734 748 764 786 810 835 861 861 889 920 960 1010
沖縄 664 677 693 714 737 762 790 792 820 853 896 952
21世紀に入っての上昇率は、
東京 64% 北海道 59% 沖縄 58% となる。
・ 徳島が18県ごぼう抜き
今回は、徳島が全国の目安額+50円を34円上回る『+84円』とし、前年45位から18県ごぼう抜きして27位となった(施行は11月1日)。北海道は前年と変わらず全国13位。
次 ― 36.最低賃金との比較計算 ―
※ 最低賃金改定に伴い、金額変更 '23.10.03
訂正
32行目 大変わり ➡ 代替わり '23.11.17
11行目 引き宇あげられる ➡ 引き上げられる '24.07.22
※ 最低賃金改定による変更 '24.09.17