35.最低賃金の話

 

 

【'25.09.19改訂】

 

 最低賃金違反だけは何があってもやってはいけない。

 このブログの読者の方々の平均的レベルを考えると、何を当たり前のことを気色ばんで力説しているのかと思うだろうが、最低賃金違反は分かりやすすぎるのだ。

 どんなに鈍感で不勉強な監督官でも、最低賃金より安い給与明細を労働者が持ってきたら、それだけで法違反の疑いはすぐに指摘できる
 すぐに会社に連絡が行き、調査の結果事実であれば、最低でも是正勧告を受け、差額を支払い、その証拠とともに是正報告書を提出しなければならない。あまりないとは思うが、悪質とみなされた場合には下手をすると送検もあり得る。

 会社側が反論するとしたらその給与明細が偽造であることを立証する、この1点しかない。
 以下のようなこともある。

 その事業所では当たり前と言えば当たり前だが、毎年最低賃金が引き上げられるたびに、最も低い方の賃金を、それと同じか上回るように賃上げをし、さらに法定外の職務関連の手当ても支給していた。
 しかし、最低賃金が引き上げられたある月、

1人の従業員の賃金を、その前月の最低賃金で支払ってしまったことがあった。

 その事業所ではすぐに気づいてその翌月に最低賃金との差額を支払い、違法状態は解消していた。単純ミスだ。
その数か月後、ごく一般的な『定期調査』ということで、監督署の調査があった。

 その際、違法状態は解消していたが、上の事実は是正勧告書に記載された。もちろん『是正済み』とはされたが。

 その若い監督官は仕事熱心な誠実そうな方だったが、調査の最後に「実は、前の調査でも違反があったんですよ。」と語った。

 それについては、代理で出席していた社労士もその先代から聞いて知っていたし、その時の是正報告書の写しも事務所で保管していた。やはり最低賃金関係である。

 その時には、その社労士の先代の方がきちんと指導すると答え、対策を文書で詳細に記し、その後何をどう解決したのかの詳細も含めて監督署に報告し、一件落着となったものと思われる。それから何の音さたもなかったようだ。

 その時の調査と今回の調査との因果関係は分からない。聞いても教えてはくれないだろうと思い、聞かなかったようだ。ただ、その事務所での監督署の定期調査の頻度から言って、偶然とすれば極めてまれな確率に当たったことになることは事実だ。

 この違反があったという『前の調査』だが、何と昭和の時代。今をさかのぼること40年近く前の調査だ。経営者も代替わりして久しいし、当時いた従業員はもうほとんどいない。この監督官が生まれる前と思われる時代の調査だ。

 裁判所などは、最近話題になったこともあってか保存期間が過ぎれば何でもポイポイ捨てているようなイメージがあるが、はっきり言って、監督署の調査で何か指摘されたら、それは未来永劫と言ったらオーバーだが、少なくとも半永久的に記録が残り続けると考えてまず間違いはない。

 そして、その調査が契機となって、何十年か経過した後(のち)の世での調査につながることもあるのだろう。
 

地域別最低賃金額は平均1,121円に

 '25年10月以降改定されるからの『地域別最低賃金』は、以下のようになっている。適用期日は2025年10月1日~2026年3月31日と幅がある。産業別の『特定最低賃金』の対象者については、その『特定最低賃金』と、『地域別最低賃金』のいずれか高い方が適用される。

1,226 東京   1,085 広島   1,057 福岡  1,043 山口 1,029 青森
1,225 神奈川  1,080 滋賀   1,054 石川  1,038 宮城 1,026 鹿児島
1,177 大阪    1,075 北海道  1,053 福井  1,036 香川 1,023 沖縄・高知
1,141 埼玉   1,074 茨城   1,052 山梨  1,035 大分      ・宮崎
1,140 愛知・千葉1,068 栃木   1,051 奈良  1,034 熊本
1,122 京都   1,065 岐阜   1,050 新潟  1,033 愛媛・島根・福島
1,116 兵庫   1,063 群馬   1,047 岡山  1,032 山形
1,097 静岡     1,062 富山   1,046 徳島  1,031 秋田・岩手・長崎
1,087 三重     1,061 長野   1,045 和歌山 1,030 佐賀・鳥取

全国加重平均 1,121円

・最低賃金の推移

 ここでは、各地域代表として、東京・北海道・沖縄の、21世紀に入ってからの最低賃金の推移を記した。

   2001 02  03  04  05  06  07  08  09  10  11  12  13
東京  708 708 708 710 714 719 739 766 791 821 837 850 869
北海道 637 637 637 638 641 644 654 667 678 691 705 719 734
沖縄  604 604 605 606 608 610 618 627 629 642 645 653 664

    2014 15   16  17  18  19   20   21   22   23   24  25
東京   888 907 932 958 985 1013 1013 1041 1072 1113 1163 1226
北海道  748 764 786 810 835 861 861 889 920 960 1010 1075
沖縄   677 693 714 737 762 790 792 820 853 896   952 1023

 21世紀に入っての上昇率は、
 東京 73%  北海道 69%  沖縄 69%   となる。
 

・ 発効日は10月1日~26年3月31日

 昨年まではほとんどの都道府県の改定が10月だったが、今回は10月発効は20都道府県にとどまり、中でも10月1日は栃木のみ。6県の発効が来年となった。最も遅いのは秋田の来年3月31日。

 

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※ 最低賃金改定に伴い、金額変更 '23.10.03

訂正
32行目  大変わり ➡ 代替わり  '23.11.17
11行目  引き宇あげられる ➡ 引き上げられる  '24.07.22

※ 最低賃金改定による変更 '24.09.17
※ 最低賃金改定による変更 '25.09.19

 

2023年03月10日