30.少しマイナーな休暇

 

 一般的な『法定外休暇』というと、前回紹介した慶弔休暇・配偶者出産休暇・傷病休暇・夏季休暇・年末年始休暇といったところだと思うので、ここではもう少しマイナーな休暇を取り上げる。
 

公務員に見る法定外休暇


 見出し自体が矛盾していて申し訳ない。公務員については、法律や条令・規則等で規定されているから休暇として存在しているわけで、例えば、ある事業場を統括する公務員の上司が、その一存で部下に勝手な名目の休暇を与えたら、その上司は処分されてしまう。

 ここは、そういう意味ではない。

 民間の法定外休暇を探ろうとして日本中の数百万の企業の任意の休暇を調べ上げたら、果てしなく終わりがないことは明らかだ。中にはユニークな休暇もあるようで時おり話題にもなるが、それをマネしても最早ユニークではないし、べらぼうに特殊な休暇を並べても参考にはならない。

 そこで、前回取り上げた『法定外休暇』以外で、公務員に適用されている休暇を見ていくことで、民間の参考になるものはないか考えてみたということだ。

 ただ、公務員といっても職種や自治体によって様々なので、ここで取り上げた休暇が全公務員に一律に適用されているわけではないので、一言お断りしておく。
 

・不妊治療休暇

 不妊治療休暇についてはまだ拝見したことはないし、私も就業規則に取り入れたことはないが、厚労省の『モデル就業規則』には例として入っている。

 公務員の場合は、少子化対策の一環として原則1年に5日、不妊治療のための休暇を有給で保証している。中小企業の場合、確率的にニーズがどれくらいあるかは分からないが、求人対策上は、取り入れるのもいいかもしれない。
 

・妊娠障害休暇

 妊娠中のつわり等、妊娠に伴う障害のため勤務が著しく困難な場合、14日間程度を限度に『妊娠障害休暇』が付与される。
 

・リフレッシュ休暇

 すべての公務員に付与されるものではないが、地方公務員は自治体によって勤続20年・30年といった節目の年に2日程度付与している場合が多い。この位は民間でも、長期勤続へのお礼の意味も込めて付与するのもいいかもしれない。
 

・ボランティア休暇

 職員がボランティア活動を行うための休暇で、公務員では1年に5日間認められている。
 

・組合休暇

 これは、労働組合活動を行うための休暇で、公務員では1年30日以内で認められている。
 中小企業では労働組合があるところは少ないが、突然出現することもある。
 民間でも、『組合休暇』を与えること自体は問題ない。

 ただ、この休暇は絶対に有給としてはならないということは重要だ。
 『敵(?)に塩を送る』のも美徳と思う社長もいるかもしれないが、それをやると『経費援助』ということで、一発で『不当労働行為』と認定されることになる。これは『御用組合』化を防ぐ趣旨だ。

 少しわき道にそれるが、例外として、労働組合への最小限の広さの事務所の貸与や、勤務時間中に行った労使協議中の給与を有給とすることは、『経費援助』とは見なされないことになっている。
 

非正規職員への法定外休暇


 さて、法定外休暇を付与する場合、正規職員と非正規職員とで区別していいものだろうか。

 会社が任意で付与している休暇を誰にどう付与しても、就業規則等できちんと定めておけば会社の任意…と考えてはいけない

 パートタイム労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)において不合理な区別は禁止されているので、法定外休暇についても全職員平等に付与しなければならないというのが原則だ。

 ただ、厚労省ガイドラインでは法定外休暇について、

・ 慶弔休暇について、週の所定労働日数が少ない従業員には勤務振替で対応し、それが
 リな場合のみ付与する。

・ 病気休職について、有期契約者の取得期限を、契約終了までの期間を踏まえて付与する

・ 勤続期間に応じて付与する休暇について、短時間労働者に、所定労働時間に比例した日
 数を付与する。

等は、問題にならない例として示されている。

 現場で散見されるのが、月給者と時給者の区別だ。

 有給の休暇について言うと、実際には同じことなのだが経営陣から見ると、月給者に付与するのは直接的な金銭の負担がないので比較的寛容だが、その負担を実感しやすい時給者に対する付与は渋りがちになるという傾向はみられる。

 ガイドラインは、象徴的な例しか示されていないので、はっきり言ってあまりあてにならない。判例もまだない場合が多い。

 全職員平等に付与するのを原則として、最低限、所定労働時間に比例した日数を付与する取り扱いは必須と心得ておいた方が良い。月給・時給だけでの区別はNGだ。

 

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2023年02月21日