『法定休暇』以外にも、会社独自で休暇を付与している場合もある。多いのは、慶弔休暇・配偶者出産休暇・夏季休暇・傷病休暇といったところだろう。今回は、これらについて考える。
慶弔休暇
『慶』で結婚の場合、本人5日・子が2~3日、遠方の場合はプラス移動日程度が相場のようだ。
本人の結婚休暇で日数が多い場合は、取得や申請期限・分割の可否についても規定しておいた方がいい場合もある。しばらくたってから新婚旅行に使いたいという場合もあるからだ。
『弔』で、1親等(親・子)や配偶者で5~7日・2親等(祖父母・孫・兄弟)で3日・3親等(叔父叔母・甥姪等)で1日。プラス移動日という規定が多い。
どちらかというと有給としていることが多い。これは、規定を設けるはるか以前から、そういう場合は『仕事のことは心配せず行ってこい。』ということが多かったからかもしれない。
配偶者出産休暇
『配偶者出産休暇』を付与しているところもあるが、これは『27.産後パパ育休は出産日か予定日から』で扱った『出生時育児休業』(出産日・予定日の早い方の日から、遅い方の日の8週間後までの間で2回に分割できる4週間の育児休業)との関係で、問題も考えられる。
・ 『配偶者出産休暇』と『出生時育児休業』
というのは、この2つの休暇を別々に与える必要があるかという問題があるからだ。原理原則から言うと、元々あった『配偶者出産休暇』が、
① 『出生時育児休業』と、趣旨・目的が同じで、
② 『出生時育児休業』の要件を満たす
場合には、『配偶者出産休暇』を『出生時育児休業』の一部として取り扱ってよい。その場合は、2つの休暇を合計した日数を、休暇として付与する必要はない。
この『配偶者出産休暇』は、一部助成金の要件ともからんで『子の出生6週間前から出生後8週間以内の期間を含む期間中』に取得できる制度とすることが推奨されてきたこともあり、『子が生まれる前に配偶者出産休暇を取得できる』とする既定のところもあるかもしれない。
『出生時育児休業』は、出生日(予定日の方が早い場合は予定日)以降にしか取得できないので、この場合には、たとえこの休暇が育児目的であったとしても『出生時育児休業』の要件を満たすとは言えない。
つまり、両『休暇』は別物と考えなければならないだろう。
傷病休暇
私傷病についての『傷病休暇』については、特に規定していない会社でも、『人道上の見地』から、付与している場合が多いと思う。規定しているところでは、勤続年数によって付与日数を決定しているところが多いようだ。
傷病休暇を付与する場合には、正社員なら普通、健康保険にも加入しているはずなので、その場合は、有給とすると前回の『産休』の場合同様、その分標準報酬日額の3分の2が支給される『傷病手当金』が減額されることになるので、無給としている場合がほとんどだ。
傷病休暇の付与にあたって、長期にわたると社会保険料をどう徴収するかで苦慮する場合がある。『産前産後休業』や『育児休業』と違って、傷病休暇中は社会保険料の免除や減額はないからだ。
会社負担分については、その従業員が在籍している以上、事業主の責任として会社の負担は甘受しなければならないが、本人負担分については毎月払ってもらうのもまた当然である。
1~2ヶ月分なら復帰後に給与からまとめて控除するという方法もあるが、社会保険料は高額なので、普通7ヶ月分くらいで給料1ヶ月分になる。
復帰直後の給与が差引支給額0円では労働意欲も減退しかねない。過剰な心遣いはかえってアダになる場合が多いので、本人のためにも、支給された傷病手当金から毎月払ってもらうことをお勧めする。住民税についても同様だ。
夏季休暇・年末年始休暇
休日としているところが多いと思うが、特に、畜産業等では生き物を扱うのでお盆や正月に一斉の休日や休暇というのはムリな場合が多い。
そうした業種では、個々の希望を聞き、日程をずらしながら年次有給休暇以外に『夏季休暇』・『年末年始休暇』という形で休暇を与えているところがある。
夏季休暇で7月~9月ころに3日間程度、年末年始休暇で年末年始の20日間くらいの間で3~5日程度という場合が多いようだ。
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※ 語句の訂正です。('23.02.21)
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