前回書いたように特別加入者については、自ら申請した『給付基礎日額』に対応した保険給付がなされることになる。
なお年金等、長期にわたる場合に関係する『スライド制』の適用はあるが、『最低・最高限度額』は適用しない。
ここでは、『給付基礎日額』が、
・ 3500円(最低額)
・ 1万円
・ 2万5000円(最高額)
の場合に色分けして書くが、定額のもの以外は大体比例計算すれば算出できる。
病院代(医療費)は全額給付
いざ労災事故が起こったときの病院代(医療費)は全額支給される。これは労働者の場合と全く同じ扱いだ。
これについては保険料の額には関係しないので、給付基礎日額が3500円でも2万5000円でも全く平等だ。
休業補償等は8割支給
業務上または通勤災害による休業の場合は1日あたり、
休業補償給付 + 休業特別給付金
『給付基礎日額』の 6割 + 2割
支給されるので全部で8割だ。つまり次のようになる。
給付基礎日額 3500円 1万円 2万5000円
休業補償等(日額) 2800円 8000円 2万円
傷病(補償)給付
療養開始1年6ヶ月後、まだ治らず一定の障害状態で常態として労務不能以上のとき、その程度によって以下の年金が支給される。
給付基礎日額 3500円 1万円 2万5000円 一時金
第1級(常時介護) 109万5500円 313万円 782万5000円 114万円
第2級(随時介護) 96万9500円 277万円 692万5000円 107万円
第3級(労務不能) 85万7500円 245万円 612万5000円 100万円
なお、タイトルの『休業(補償)給付』というのは、業務災害のときは『傷病補償給付』・通勤災害のときには『補償』がとれて『傷病給付』になるので、これをまとめて『傷病(補償)給付』とする。以下同じ。
障害(補償)給付
治癒(症状固定)後、障害が残ったときに支給。1~7級までが年金・8級以下は一時金だ。
給付基礎日額 3500円 1万円 2万5000円 定額の一時金
障害等級
第1級 年金 109万5500円 313万円 782万5000円 342万円
第2級 ” 96万9500円 277万円 692万5000円 320万円
第3級 ” 85万7500円 245万円 612万5000円 300万円
第4級 ” 74万5500円 213万円 532万5000円 264万円
第5級 ” 64万4000円 184万円 460万円 225万円
第6級 ” 54万6000円 156万円 390万円 192万円
第7級 ” 45万8500円 131万円 327万5000円 159万円
第8級 一時金 176万0500円 503万円 1257万5000円 65万円
第9級 ” 136万8500円 391万円 977万5000円 50万円
第10級 ” 105万7000円 302万円 755万円 39万円
第11級 ” 78万0500円 223万円 557万5000円 29万円
第12級 ” 54万6000円 156万円 390万円 20万円
第13級 ” 35万3500円 101万円 252万5000円 14万円
第14級 ” 19万6000円 56万円 140万円 8万円
障害(補償)年金前払一時金
障害(補償)年金が支給決定された場合、はじめの一定期間内に申し出れば、等級によって定められた一定の期間分(日数分)の年金を、先に一括で受取ることができる。これを『前払一時金』という。
受取ることができる金額は、以下の表の『最大日数』分かそれ以内の200日の倍数分となっている。ここでは最高額のみを示す。
ただ、ここで前払一時金を受給すると、年3%単利で割引いた額の合計額がその金額に達するまで年金は停止される。
また、このそれぞれの最高額は、既払いの年金がその金額に達する前に受給者が(他の原因で)死亡したときに一定の遺族に支給される『差額一時金』の限度額にもなっている。
つまり『前払一時金』の最高額は、いったん障害(補償)年金の支給が決定されたら、よほどのことがない限り支給される事実上の『最低保障額』と考えてよい。
・ 障害(補償)年金の前払一時金の最高額・差額一時金の限度額
給付基礎日額 3500円 1万円 2万5000円
障害等級 最大日数
第1級 1340日分 469万円 1340万円 3350万円
第2級 1190日分 416万5000円 1190万円 2975万円
第3級 1050日分 367万5000円 1050万円 2625万円
第4級 920日分 322万円 920万円 2300万円
第5級 790日分 276万5000円 790万円 1975万円
第6級 670日分 234万5000円 670万円 1675万円
第7級 560日分 196万円 560万円 1400万円
介護(補償)給付
傷病・障害2級以上で一定の身体状態で介護を受けたときに支給される。これについては『給付基礎日額』との関係は一切ない。医療費と同様、限度は定額だ。
どういうときにどういう支給になるかも労働者の場合と同じなので、『₁₈₀.労災で介護を要するときの給付』をご参照願いたい。
・ 介護補償給付の月額
限度額 最低保障
常時介護 17万7950円 8万1290円
随時介護 8万8980円 4万0600円
遺族(補償)年金
これはご承知の通り特別加入者が業務上や通勤によって亡くなったときの年金給付だ。
遺族の人数によって給付基礎日額の何日分かが決まるが、遺族が1人でその1人が『55才以上または障害状態の妻』の場合は若干優遇される。下の表で『一定の妻』としたところだ。
・ 遺族(補償)年金額
給付基礎日額 3500円 1万円 2万5000円
遺族数
1人 153日分 53万5500円 153万円 382万5000円
1人(一定の妻) 175日分 61万2500円 175万円 437万円
2人 201日分 70万3500円 201万円 502万5000円
3人 223日分 78万0500円 223万円 557万5000円
4人以上 245日分 85万7500円 245万円 612万5000円
・ 遺族特別支給金
これ以外に『遺族特別支給金』として、一律300万円の一時金が支給される。
遺族(補償)年金前払一時金
遺族(補償)年金についても、上の障害(補償)年金と同様に『前払一時金』として一定の金額を一括で受取ることができる。
金額は給付基礎日額200日の倍数分で、最高1000日分となっている。その後の停止期間や要件は障害(補償)年金と同じだ。
・ 遺族一時金も同額
従ってこの最高額も、特別な事情がなければ『最低保障額』と考えてよく、『年金』を受給できる方が最初からいない場合の『遺族一時金』もこの金額となる。
・遺族(補償)年金前払一時金の最高額・遺族一時金の額
給付基礎日額 3500円 1万円 2万5000円
最大日数
1000日分 365万円 1000万円 2500万円
葬祭料・葬祭給付
業務や通勤で死亡した場合の葬祭料(通勤なら『葬祭給付』)の額も労働者と同じ
『給付基礎日額』× 30日分 + 31万5000円 (最低限度60日分)
なので、次の額が支給される。ここだけは定額部分の関係で、単純な比例計算にはならない。
給付基礎日額 3500円 1万円 2万5000円
葬祭料・葬祭給付 42万円 61万5000円 150万円