₁₈₆.労災特別加入者の保険給付額



 前回書いたように特別加入者については、自ら申請した『給付基礎日額』に対応した保険給付がなされることになる。

 なお年金等、長期にわたる場合に関係する『スライド制』の適用はあるが、『最低・最高限度額』は適用しない

 ここでは、『給付基礎日額』が、
 

・ 3500円(最低額)
・ 1万円
・ 2万5000円(最高額)

 
 の場合にして書くが、定額のもの以外は大体比例計算すれば算出できる。
 

病院代(医療費)は全額給付

 
 いざ労災事故が起こったときの病院代(医療費)は全額支給される。これは労働者の場合と全く同じ扱いだ。

 これについては保険料の額には関係しないので、給付基礎日額が3500円でも2万5000円でも全く平等だ。
 

休業補償等は8割支給

 
 業務上または通勤災害による休業の場合は1日あたり、


            休業補償給付  +  休業特別給付金
『給付基礎日額』の    6割    +     2割

 
 支給されるので全部で8割だ。つまり次のようになる。
 

給付基礎日額    3500円   1万円   2万5000円

休業補償等(日額) 2800円   8000円   2万円
 

傷病(補償)給付

 
 療養開始1年6ヶ月後、まだ治らず一定の障害状態で常態として労務不能以上のとき、その程度によって以下の年金が支給される。
 

給付基礎日額     3500円   1万円   2万5000円   一時金

第1級(常時介護) 109万5500円 313万円 782万5000円  114万円
第2級(随時介護)  96万9500円 277万円 692万5000円  107万円
第3級(労務不能)  85万7500円 245万円 612万5000円  100万円


 なお、タイトルの『休業(補償)給付』というのは、業務災害のときは『傷病補償給付』・通勤災害のときには『補償』がとれて『傷病給付』になるので、これをまとめて『傷病(補償)給付』とする。以下同じ。
 

障害(補償)給付

 
 治癒(症状固定)後、障害が残ったときに支給。1~7級までが年金・8級以下は一時金だ。
 

給付基礎日額   3500円    1万円   2万5000円  定額の一時金
障害等級
第1級 年金  109万5500円  313万円  782万5000円  342万円
第2級  ”   96万9500円  277万円  692万5000円  320万円
第3級  ”   85万7500円  245万円  612万5000円  300万円
第4級  ”   74万5500円  213万円  532万5000円  264万円
第5級  ”   64万4000円  184万円  460万円      225万円
第6級  ”   54万6000円  156万円  390万円      192万円
第7級  ”   45万8500円  131万円  327万5000円  159万円

第8級 一時金 176万0500円  503万円 1257万5000円  65万円
第9級  ”   136万8500円  391万円   977万5000円  50万円
第10級  ”  105万7000円  302万円   755万円      39万円
第11級  ”   78万0500円  223万円   557万5000円  29万円
第12級  ”   54万6000円  156万円   390万円      20万円
第13級  ”   35万3500円  101万円   252万5000円  14万円
第14級  ”   19万6000円   56万円   140万円      8万円


障害(補償)年金前払一時金
 

 障害(補償)年金が支給決定された場合、はじめの一定期間内に申し出れば、等級によって定められた一定の期間分(日数分)の年金を、先に一括で受取ることができる。これを『前払一時金』という。

 受取ることができる金額は、以下の表の『最大日数』分かそれ以内の200日の倍数分となっている。ここでは最高額のみを示す。

 ただ、ここで前払一時金を受給すると、年3%単利で割引いた額の合計額がその金額に達するまで年金は停止される。

 また、このそれぞれの最高額は、既払いの年金がその金額に達する前に受給者が(他の原因で)死亡したときに一定の遺族に支給される『差額一時金』の限度額にもなっている。

 つまり『前払一時金』の最高額は、いったん障害(補償)年金の支給が決定されたら、よほどのことがない限り支給される事実上の『最低保障額』と考えてよい。
 

・ 障害(補償)年金の前払一時金の最高額・差額一時金の限度額

 
     給付基礎日額   3500円     1万円  2万5000円
障害等級  最大日数
第1級    1340日分  469万円     1340万円  3350万円
第2級    1190日分  416万5000円  1190万円  2975万円
第3級    1050日分  367万5000円  1050万円  2625万円
第4級    920日分  322万円      920万円  2300万円
第5級    790日分  276万5000円   790万円  1975万円
第6級    670日分  234万5000円   670万円  1675万円
第7級    560日分  196万円      560万円  1400万円
 

介護(補償)給付

 
 傷病・障害2級以上で一定の身体状態で介護を受けたときに支給される。これについては『給付基礎日額』との関係は一切ない。医療費と同様、限度は定額だ。

 どういうときにどういう支給になるかも労働者の場合と同じなので、『₁₈₀.労災で介護を要するときの給付』をご参照願いたい。
 

・ 介護補償給付の月額

 
        限度額     最低保障

常時介護   17万7950円   8万1290円
随時介護     8万8980円   4万0600円

 

遺族(補償)年金

 
 これはご承知の通り特別加入者が業務上や通勤によって亡くなったときの年金給付だ。

 遺族の人数によって給付基礎日額の何日分かが決まるが、遺族が1人でその1人が『55才以上または障害状態の妻』の場合は若干優遇される。下の表で『一定の妻』としたところだ。
 

・ 遺族(補償)年金額

 
        給付基礎日額   3500円    1万円   2万5000円
遺族数
1人       153日分   53万5500円  153万円  382万5000円
1人(一定の妻) 175日分   61万2500円  175万円  437万円
2人       201日分   70万3500円  201万円  502万5000円
3人       223日分   78万0500円  223万円  557万5000円
4人以上     245日分   85万7500円  245万円  612万5000円
 

・ 遺族特別支給金

 
 これ以外に『遺族特別支給金』として、一律300万円の一時金が支給される。
 

遺族(補償)年金前払一時金

 
 遺族(補償)年金についても、上の障害(補償)年金と同様に『前払一時金』として一定の金額を一括で受取ることができる。

 金額は給付基礎日額200日の倍数分で、最高1000日分となっている。その後の停止期間や要件は障害(補償)年金と同じだ。
 

・ 遺族一時金も同額

 
 従ってこの最高額も、特別な事情がなければ『最低保障額』と考えてよく、『年金』を受給できる方が最初からいない場合の『遺族一時金』もこの金額となる。
 

・遺族(補償)年金前払一時金の最高額・遺族一時金の額

 
    給付基礎日額  3500円   1万円   2万5000円
 最大日数
 1000日分      365万円  1000万円  2500万円

 

葬祭料・葬祭給付

 
 業務や通勤で死亡した場合の葬祭料(通勤なら『葬祭給付』)の額も労働者と同じ
 

『給付基礎日額』× 30日分 + 31万5000円 (最低限度60日分)
 

なので、次の額が支給される。ここだけは定額部分の関係で、単純な比例計算にはならない。
 

    給付基礎日額  3500円   1万円    2万5000円

葬祭料・葬祭給付    42万円  61万5000円   150万円

 

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2024年11月08日