介護補償給付
これは、労基法の災害補償には対応するものがない労災保険独自の給付だ。介護費用の負担が増大してきたことに対応して'06年に始まった。
・施設以外で、常時 or 随時介護を要するとき
介護補償給付の支給要件は、法律には次のように記されている(労災保険法12条の8・4項)
介護補償給付は、障害補償年金、又は傷病補償年金を受ける権利を有する労働者が、その受ける権利を有する障害補償年金又は傷病補償年金の支給事由となる障害であって厚生労働省令で定める程度のものにより、常時又は随時介護を要する状態にあり、かつ、常時又は随時介護を受けているときに、当該介護を受けている間(次に掲げる期間を除く。)、当該労働者に対し、その請求に基づいて行う。
一 障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第五条第十一項に規定する障害者支援施設(以下「障害者支援施設」という。)に入所している間(同乗第七項に規定する生活介護(以下「生活介護」という。)を受けている場合に限る。)、
二 障害者支援施設(生活介護を行なうものに限る。)に準ずる施設として厚生労働大臣が定めるものに入所している間
三 病院又は診療所に入院している間
ここでは、いかに分かりづらいかを分かっていただくため条文をそのまま載せたが、これでもまだ2行目の『厚生労働省令で定める程度』のものがどの程度なのかは分からない。
実は、これは施行規則の『別表第三』に書かれていてこれも大変長く、そのまま書くと結局字数を稼ぎたいだけ(好きで書いているだけなので、そんなものを稼いでも何にもならないが)という意図がバレてしまうのでまとめると、
・ 常時介護を要する状態
精神や臓器の機能障害により、常に介護を要する状態
・ 随時介護を要する状態
精神や臓器の機能障害により、随時介護を要する状態
となる。つまり、介護補償給付の受給の要件は、次のようになる。
・ 介護補償給付の要件
① 精神や臓器の機能障害により
② 傷病補償年金又は傷病補償年金の2級以上を受けている方が、
③ 常時又は随時介護を要する状態で、
④ 自宅等で
⑤ 介護を受けている
場合。
④の『自宅等』は、正しくは一定の施設(下記)以外ということになる。
・ 介護補償給付の対象外になる施設
ア. 障害者支援施設(生活介護があるもの)
イ. 特別養護老人ホーム
ウ. 原爆被爆者特別養護ホーム
エ. 病院・診療所・介護老人保健施設
『常時』か? 『随時』か? 具体的には
分かったようで分からないのが『介護を要する状態』が『常時』なのか『随時』なのかだ。この状態は厚労省から『常時』と『随時』に分けて示されている。
イメージ的には1級なら常時・2級なら随時と捉えられることがあるが、必ずしもそうはならない。
・ 常時介護を要する状態
① 精神神経・胸腹部臓器に障害を残し、常時介護を要する状態に該当する方
(障害等級1級3・4号、傷病等級1級1・2号)
② ・両眼が失明するとともに、障害又は傷病等級1・2級の障害を有する方
・両上肢及び両下肢が亡失又は用廃の状態にある方
など、①と同程度の介護を要する状態である方
・ 随時介護を要する状態
① 精神神経・胸腹部臓器に障害を残し、随時介護を要する状態に該当する方
(障害等級2級2号の2・2号の3、傷病等級2級1・2号)
② 傷病等級1級又は傷病等級1級に該当する方で、常時介護を要する状態ではない方
ということになっているので、障害又は傷病等級1級の場合は、障害の種類を問わず少なくとも『随時介護』を要する状態には該当する。
介護補償給付の支給額
介護補償給付は月単位で支給され、その金額は2024年度現在、
限度額 最低保障
常時介護 17万7950円 8万1290円
随時介護 8万8980円 4万0600円
と、『随時介護』は『常時介護』の約半額になっている。
介護費用の『実費』分は、限度額までは全額支給される。
親族等による介護などで『実費』が『最低保障』を下回る場合でも、『最低保障』額は支給される。ただし、介護を受け始めた月は『実費』のみ。