・週の初日は就業規則で決まる
ここまで、『週の初日が何曜日であっても』とか、『週の初日は日曜日とする』とか書いてきたが、そんなもの勝手に決めれるのか?と思った方もいるはずだ。
『勝手に』というと語弊はあるが、『週の初日は〇曜日とする』と就業規則等で定めれば、週の初日は自由に決めてよい。
法定休日は週1回というのは分かっても、週1回の『週』とは何曜日から何曜日までをいうのかはっきりしておかないと混乱と紛争のもとになる。
もっとも、決めていない場合は、普通のカレンダーのように日曜から土曜までが1週間となる。
・短時間労働の法定休日
例として、休憩なしの1日5時間(勤務時間9:00~14:00)・所定週5日(月~金)・休日は土日・時給1,200円・手当なし(だから基礎賃金も1,200円/h)の方を考える。週の初日の規定はないので、この方の事業所の1週間は日曜日に始まる。
この方が月~金の通常勤務のほか、土曜日出勤して5時間働いたとする。この週の給与はどうなるか。
何か、前回の話の焼き直しのような感もあるが、今回は昼間の1日5時間・週25時間の所定労働時間なので、法定労働時間外、ましてやそれが60時間を超えるなどというのはあまり考えられない。これは全く別の話である。決して話のネタが尽きてきたわけではない。
この場合は休日の土曜日に働きはしたが、その5時間分を足しても週30時間。次のように普通に時給分を支払えば足りる。前回の①と同じだ。ここまでは何の問題もない。
1,200円/h × 30h = 36,000円
・この週に日曜出勤していたら
この方がさらに、この週の日曜日、準備作業で1時間だけ働いていたとする(たとえ1分でも大差ないのだが、あまり極端な例を出しても非現実的なので1時間とする。)。
この場合、この週の休日がなくなるので、法定休日労働が発生するところまでは普通にご理解いただけると思う。この週の給与は次のようになると思う方が多いかもしれない。
法定休日労働 1h(日) 1,200円/h × 1.35 × 1h = 1,620円
法定時間内労働 30h(月~土) 1,200円/h × 30h = 36,000円
計 31h 37,620円
ただ、この日曜日の1時間の労働がこのように法定休日労働となるのは、日曜日を法定休日と特定している場合だけの話なのだ。
法定休日を特定していない場合は
土日が所定休日で、法定休日を特定していない場合『その週における後順に位置する土曜日における労働を法定休日とする』ことになっている(H21.10.5『改正労働基準法に係る質疑応答』)。
つまり、法定休日を特定していない場合のこの週の給与は、次のように計算される。
法定時間内労働 26h(日~金)1,200円/h × 26h = 31,200円
法定休日労働 5h(土) 1,200円/h × 1.35 × 5h = 8,100円
計 31h 39,300円
「法定休日の定めがない場合は、一般的に日曜日が法定休日になるんじゃないの?」と思う方もいるかもしれないが、そうはならない。
確かにこれは法律ではないし通達ですらない単なる『行政解釈』だが、最高裁まで争う覚悟(というより趣味といった方が良いかもしれない)がないのであれば、従っておいたほうが良い。
・決めていないと振替えようがない
さて、同じ曜日に同じ時間、まったく同様に勤務して1,680円の差が出てしまった。時給1,200円の方にとって、1,680円の差は、看過できるものではない。
この場合、何も決めていなければ、自動的に土曜日の労働が法定休日労働とみなされる。
日曜の労働を法定休日労働としたいならば、日曜日を法定休日と決めておくことが必要だ。
言うまでもないことだが後付けは認められない。
この場合も、労働させた日曜日の前日以前に『法定休日を振替えよう』と思ったところで、元々法定休日を特定していなければ振替えようがない。
法定休日を特定しない方が残業代が少なくなる場合もあるが、このように特定しないことで高くなる場合もあるので、自社でどういう残業パターンが多いのか、等を吟味して決めた方が良い。
または、週の初日を日曜日以外にしておき、連続する土日のどちらかを必ず休むように運用する方法もある。それが可能なら、法定休日労働そのものが発生しない。
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※ 最低賃金改定に伴い、金額変更 '23.10.03