休日労働の35%割増については誤解も見られる。
休日労働とは、あくまで法定休日の労働のことである。週休2日の場合、どちらか一方を休日としていれば、通常、法定休日ではない。
ここで『通常』とことわったのは、たとえば、法定休日を毎週日曜日としている事業所で、あらかじめ替りの休日を決めずに日曜日に労働させた場合は、その週に他に休日があっても休日労働となるからだ。
休日労働をさせた後で代休を与えても、これは変わらない。
休日割増は法定休日のみ
(法定休日でない)所定休日の労働は、週40時間の法定労働時間内であれば単なる所定時間外の労働であり、割増賃金の問題は発生しない。もちろん『就業規則』等で、いかなる休日の労働にも割増賃金を支払うと定めてあるのなら、その通りにしなければならない。
また、週40時間を超した法定時間外であれば、普通の日の法定時間外労働と同様に考えればよい。
法定休日は、週1回設けることだけが決められている。なるべく曜日を固定することが望ましいとはされているが、義務とはなっていない。
法定労働時間が週40時間なので、現在は週5日勤務というのが一般的である。つまり、法定休日の他にあと1日休日があるのが普通になっている。1日6時間40分・週6日勤務で40時間というのは例外の部類に入るだろう。
週5日労働の場合、単なる所定休日に労働させても、週40時間(法定休日分除く)に収まっている限り、休日割増の問題も時間外労働の問題も生じない。
月60時間超の時間外労働は休日より割増に
ここで、月給の月影さんと同じ働き方(基礎賃金1,423円/h・所定労働時間1日8時間で週40時間・週の初日は日曜日・休日は土日祝日・〆日は月末)だが、法定休日の定めがない場合で、休日の土曜日の昼間4時間仕事をした日の残業代を考える。
① 法定時間内の残業の場合(所定時間外)
この週の水曜日が祝日で休みだったとき、土曜日に4時間仕事をした場合の残業代はどうなるか。
月火木金と1日8時間勤務していた場合、金曜日までで週の法定時間内の労働時間は32時間なので、土曜日の4時間は単なる『所定時間外労働』となる。この場合は割増はつかない。従って、この日の残業代は、
1,423円/h × 4h = 5,692円
でよい。
もし、月火木金のどこかで残業があっても、それはそれぞれの日の法定時間外労働として計算するので、土曜日の残業代には影響しない。
もちろん法定時間内であっても残業は残業なので、この5,692円は払わなければならないのは言うまでもない。
② 普通の法定時間外労働の場合
祝日のない普通の週で、日曜に休み月から金まで普通に1日8時間勤務していた場合、金曜日で週40時間に到達する。
この場合、土曜日の4時間分は『法定時間外労働』なので、残業代は、
1,423円/h × 1.25 ≒ 1,779円/h
1,779円/h × 4h = 7,116円
となる。
③ 法定休日労働の場合
ただし、②でこの週の月曜の前日、日曜日に出勤していた場合は話が変わる。この方は、この週1日も休日を取っていないことになるので、土曜の労働は『法定休日労働』となる。
だから、この日の残業代は、
1,423円/h × 1.35 ≒ 1,921円/h
1,921円/h × 4h = 7684円
だ。
④ 月60時間超の法定時間外労働の場合
さて、2023年度より、中小企業も月60時間超の時間外労働には50%割増の賃金を支給することが法律上の義務となった。
②で、この日の前日までに、この月通算60時間以上の法定時間外労働をしていたとすると、土曜の労働は、丸々『60時間超の法定時間外労働』となるので、残業代は、
1,423円/h × 1.5 ≒ 2,135円/h
2,135円/h × 4h = 8,540円
になる。
ただ、ここでもし③と同じようにこの週の日曜日、日曜出勤していた場合は、こちら(この土曜日)が法定休日労働となり(この理由は後で書きます。)、残業代は③と同様になる。
時間外労働と休日労働は基本的には別物
このように、同じ土曜休みに同じように勤務しても、それまでの労働のしかたで残業代が4通りに分かれる。
ここも誤解があるところだが、後で述べるように、労働基準法上は、時間外労働と法定休日労働は基本的には別物扱いなので、時間外労働時間と休日労働時間は別計算になる。
そうすると、ここで見てきたように、時間外60時間超では、休日割増との逆転現象が起こる。これでは、休日労働を促進するインセンティブを与えかねないのではないかと危惧される面もある。
次 ― 17.法定休日と残業代 ―
※ メインタイトル変更しました。
『休日の労働は4通りの残業代』 ➡ 『休日の残業代は4通り』 '23.01.06
『休日の残業代は4通り』 ➡ 『休日出勤の剤業代は4通り』 '23.03.30