15. 6時間労働を超したら休憩

 

 前回の前段で、もう1つ注意すべき点とは、この場合、20時から午前2時まで6時間の仕事で1時間残業させているので休憩が必要になることだ。労働時間が6時間を少しでも超えた段階で、45分の休憩を勤務時間の途中で与える義務が生じる。

 これは深夜労働に限った話ではないのだが、忙しい時間帯だけパートの方を雇用しているパターンは多い。1日5~6時間が所定労働時間ということは結構あるので、そういう雇用形態の場合は注意する必要がある。
 

・初めから休憩を組み込んだ方がいい場合も

 この場合、休憩を与えないまま6時間を超えて労働させて帰らせると違法状態になってしまう。

 かと言って、忙しくて残業させるのだろうから、定時の終業の2時になって『じゃあ、これから45分休んでください』というわけにはなかなかいかないだろう。

 6時間を超えた瞬間に休憩をとることまで法は要求していないので、違法状態を解消するには、残業終了直前(2時55分くらい?)から休憩を45分取らせ、3時40分から5分間何か仕事をさせて帰らせるくらいしか方法はない。

 早く帰りたい従業員からブーブー文句を言われるのは目に見えているが、法令順守という建前からは致し方ない。労働基準法は民法等と違って『強行法規』なので、一般の自由な私人間の関係のように「当事者同士が納得していたので…」という言い訳はきかないのだ。

 度々6時間を超える可能性があるのなら、最初から所定労働時間の途中に休憩を45分組み込んでおいた方が良いだろう。
 もちろんこれは、深夜労働だけでなく、昼間の仕事でも同じことだ。
 

休憩の原則『労働時間の途中』に例外はない

 一応、休憩の原則について書いておく。

 『使用者は、労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩時間を、労働時間の途中に、一斉に与えなければならない。使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない。』

 一斉取得の原則については、後で述べるが飲食店等除外していい職種は多く、また、労使協定による除外規定もある。『自由利用』についても一定の制約がある。交通機関の乗務員の一部など、休憩そのものが適用されない例外もある。

 ただ1つ『労働時間の途中に』の原則に関しては、一切の例外・除外規定はない。いかなる場合でも、何がなんでも、絶対に『労働時間の途中』でなければならない。

 一般的な昼間の仕事の場合、日本では『昼休み1時間』という慣例があるので、フルタイム8時間の労働者の場合、1時間の休憩を組んでいる会社が多い。この場合は休憩時間について悩む必要はない。

 最低基準の45分休憩にしておくと、極端な話、1分でも残業させたらどこかであと15分休憩が必要になる。
 

・休憩を取らずに8時間労働してしまったら


 所定労働時間8時~17時(休憩1時間)の仕事で、16時、「休憩を取らないで仕事をしたからもう帰るよ」と言われたらどうするか。こういうQ&Aでも聞いたことのないような単純で難しい問題が、現場ではよく発生する。

 これが事実ならすでに8時間の所定労働を終えているので、36協定を結んでいないなら、非常災害でもない限りこれ以上労働させることはできない。かと言ってそのまま帰らせると『休憩不取得』の違法行為となる。

 これは、答えのない問いだ。休憩時間に取るべき休憩を取っていないのだから『職務命令違反』ともなるが、きちんと労働時間をマネジメントできていなかった使用者の責任も問われる。どちらにしても、すでに休憩を取らずに8時間労働してしまったのだから、この時点では対応のしようがない。

 36協定があるのなら、事務所でもどこでもいいから1時間以上(45分ではダメ)休ませ(私用を済ませてもらってきてもよい)、その後日報でも書いてもらって、その後に帰らせるという善後策は可能だ。日報を書いている間は労働時間なので、それで何とか合法の枠に収まる。

 当然、休憩を取るために残業させるのは本末転倒なので、『疲労回復』・『労災防止』等、休憩の趣旨を理解してもらって、次からは休憩時間は必ず休むよう指導するしかない。

 また、休憩を取りづらい環境なら、そうした職場環境を整備する必要が生ずる場合もあるかもしれない。

 

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※ 加筆
・初めから休憩を組み込んだ方がいい場合も
9行目 労働基準法は…  '24.05.23

2022年12月23日