₁₆₁.国民年金保険料 免除.猶予と要件



 ここまで登場した国民年金保険料の免除・猶予についてまとめると、次のようになる。


※ 『老齢年金』欄は、全額納付した場合の老齢基礎年金額に対する支給割合
※ 『配』は配偶者・『主』は世帯主
※ 『支払額』は、2024年度の月額納付保険料
※ 『届出』は事実を報告すること・『申請』は承認を求めること

 各々の年金についての説明は、書くとしてもかなり後になりそうな気がするので、どの年金は、どのような状態がどのくらいあれば、支給対象になるのか、これも簡単にまとめておく。
 

老齢年金は未納以外が10年

 
 何度も書いたが、これは老齢基礎年金だけでなく、老齢厚生年金も同じだ。
 つまり、

(国民年金保険料の)納付期間+免除期間+猶予期間 ≧ 10年

でないと、老齢年金は受けられないということになる。もちろん20~59才の厚生年金期間は『納付期間』に入る。また、これらの期間が『ある』場合は前回の『合算対象期間』も含める。

 ただ、これらの期間が10年以上あっても、20~59才までのすべてが『学生納付特例期間』か『納付猶予期間』しかなかった…という場合は、資格期間は確保したものの肝心の老齢年金の原資が全くないということになるので年金は1円も受けられないことにはなるが、こうしたケースはまれだろう。
 

障害基礎年金は基本、加入期間の3分の2

 
 障害基礎年金の保険料納付要件については ー ₁₅₁.20才の学生は国民年金未納に注意 ー に書いた通り、

初診日の前日において
① 初診日の前々月までの加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付又は免除されていること          又は
② 初診日に65才未満であり、初診日の前々月までの直近の被保険者期間1年間に保険料の未納がない

こととなっている。
 ただし、②の『初診日の前々月までの直近の被保険者期間1年間に保険料の未納がない』は2026年3月までの時限措置ということになっているので、法改正がない限り2026年4月以降が初診日となる場合は①の『未納が加入期間の3分の1以下』を死守しなければならなくなる。
 

障害厚生年金は、+ 絶対『初診日に被保険者』

 
 これに加えて、障害厚生年金の受給には『初診日に被保険者』であることが絶対条件で、例外は一切ない

 たとえば心身に違和感があって自ら仕事を続けられないと判断して離職する場合でも、それが障害につながることを考えれば、いかに忙しい職場であろうと、最低でも会社員(正確には『厚生年金の被保険者』)であるうちに1度は病院で診断してもらうことは鉄則だ。

 筆者の経験上も、離職して何年もたってから障害年金を受給した方で、離職の5日前に病院の受診歴があったおかげでこれが『初診日』となって障害厚生年金を受給できたケースがあった。
 

遺族基礎年金の要件

 
 遺族基礎年金の要件については、超ザックリ言うと、老齢年金と障害年金のハイブリッドっぽい感じになる。

 まず、遺族基礎年金の要件についても、前項の障害年金とほぼ同じ要件がある。ほぼ上の『初診日』が『死亡日』に代わっただけだ。
 

◎ 保険料納付要件

 
     死亡日の前日において、

① 死亡日の前々月までの加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付又は免除されている         又は
② 死亡日に65歳未満であり、死亡日の前々月までの直近の被保険者期間1年間に保険料の未納がない(2026年3月までに限る。)

ア.被保険者
イ.被保険者だった国内居住の60~64才の方

が死亡したとき。

で、ここまではほとんど障害年金と同じだ。ただ、これにさらに

ウ.保険料納付済期間等が25年以上ある方

が死亡した場合も『可』となっている。
 ここで『保険料納付済期間等』とは、『納付済期間』・『免除期間』・『合算対象期間』をいう。『合算対象期間』だけで25年というのはダメなのは老齢年金と同じ。

 つまり、亡くなった方が20~64才なら基本的には障害年金の『初診日』同様、死亡日前日において納付要件を満たす必要があるが、何才で亡くなった場合でも保険料納付済期間等が25年以上ある方については『保険料納付要件』は問われない

 もっとも『納付済期間』が25年以上あるのに『納付要件』を満たしていないというのはまれだろう。
 

・ 対象は『子』か『配偶者』


 遺族基礎年金の支給対象は、


 ・ 死亡者の18才(一定の障害がある場合は20才)未満の『子』   または
 ・ その『子』と生計を同じくする配偶者

となっている。つまり亡くなった方に子がなければ遺族基礎年金は支給されない。
 

遺族厚生年金の要件


 遺族厚生年金の要件は、上の『◎ 保険料納付要件』を満たした

ア.被保険者が死亡
イ.被保険者期間中に初診日のある傷病により、初診日から5年以内に死亡

した場合のほか、保険料納付要件に関わらず

ウ.1・2級の障害厚生年金の受給権者が死亡
エ.保険料納付済期間等が25年以上ある方が死亡

した場合も対象になる。
 

・ 遺族厚生年金の対象は、妻、または一定年齢の夫・子・父母・孫・祖父母

遺族厚生年金の支給対象は、

 ・ 死亡者の(死亡時30才未満で子がない場合は5年間)
 ・ 死亡者の18才(一定の障害がある場合は20才)未満の子・孫
 ・ 死亡者の55才以上の夫・父母・祖父母

だが、夫と妻で扱いが違う点については近々改定の動きがあるようだ。
 ただ、残念なことに夫の年齢要件を緩和するのではなく、妻の要件が厳しくなりそうな気配だ。

 

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※ メインタイトル変更  '24.10.12

2024年07月27日