申請による国民年金保険料の免除は、全額免除・4分の3免除・半額免除・4分の1免除と4種類ある。
ここで最初から4種類のそれぞれについて1つずつ説明していくと、同じようなことをくどくど何度も書かなければならず、読むほうも大変だと思うので、まず、これら『申請免除』全体を通しての特徴を挙げることにする。
申請免除の特徴
・ 老齢基礎年金額満額の半分が国庫負担
こうした『免除期間』は老齢基礎年金については、20才から59才まで40年間満額の保険料を納付した場合の支給額の半額が国庫から支給される。この点は未納と比べるともちろんだが『学生納付特例制度』のような猶予期間と比べても雲泥の差だ。
国庫から支出される金額は『免除期間』も全額納付した期間と変わらないので、40年間全額免除の場合でも満額納付した場合の半分は保障されることになる。
図に書くと次のようになる。『保険料納付状況』は、40年間ずっとその状況だった想定だ。
保険料納付状況 国庫負担 納付分 老齢基礎年金額('24年度)
満額納付した場合 ■■■■ ■■■■ 81万6000円
4分の1免除の場合 ■■■■ ■■■□ 71万4000円
半額免除の場合 ■■■■ ■■□□ 61万2000円
4分の3免除の場合 ■■■■ ■□□□ 51万0000円
全額免除の場合 ■■■■ □□□□ 40万8000円
未納の場合 □□□□ □□□□ 0円
猶予で追納なし □□□□ □□□□ 0円
40年の間には色々なことがあるので、色々な状況が入り交じっているのが普通だろう。厚生年金加入期間については全額納付した期間と同様に扱われるので、その期間も含めて満額納付と未納のどちらかしかないという場合は、このサイコロ1個(□)が10年分と考えてもいい。
たとえば20年全額納付したがあとの20年は未納だった…という場合は
■■□□ ■■□□ 40万8000円
となり、20年分総額407万5200円納付していても('24年度価額)、40年間ずっと全額免除だった場合と同じ金額になる。これを見ても、いかに免除申請が重要かと言うことが分かる。
・ 『未納』以外の期間は10年は必要
同様に10年分総額203万7600円(同)全額納付し、あと30年未納という場合はこの半分の20万4000円の年金が支給されることになるが、これが1ヶ月分少なかった場合は支給要件を満たせず年金は0になる。
老齢年金の受給権を得るには、最低10年は『未納』以外の期間でなければならないからだ。これは比較的知られているが、以前は25年必要だったので50才前でもあきらめている方がたまにいる。もったいない話だ。
・ 配偶者・世帯主の所得等も問われる
免除申請はどれも『本人・配偶者・世帯主』の各々の所得等を調査し、いずれも免除の基準以内であることが要件になる。
つまり、すべてを網羅することはできないが、一般的な状況で要件が問われるのは次のような方となる。
本人の状況 要件が問われる人
① 独身の世帯主(ひとり親も含む。) 本人のみ
② 既婚の世帯主・配偶者が世帯主 本人と配偶者
③ 独身で家族が世帯主 本人と世帯主
④ 既婚で配偶者以外が世帯主 本人と配偶者と世帯主
①の『ひとり親』とは、単純に『配偶者がなく、子と同世帯』の場合で、税金関係の『ひとり親控除』とは関係ない。
たとえば40~50代の親(世帯主)と20~30代の子の2人世帯を考えると、基本的に親子とも国民年金保険料の納付が必要だが、①により親の免除に子の所得は関係ないが、③により子の免除には親の所得が関係する。
具体的な金額は後で見ていくとして、この世帯の場合、子が高額所得者でも親は免除になり得るが、親が高額所得者なら子は免除にならない。
・ 学生は申請できない
前に( ー ₁₅₂.学生納付特例制度の利用 ー )書いたが、たとえ本人・配偶者・世帯主の所得要件等が満たされていても、学生は免除申請はできないので、学生納付特例制度を活用するしかない。
・ 追納は10年可能
免除された分の保険料は、10年以内なら追加で支払って老齢基礎年金を満額に近づけることができる。ここまでは『学生納付特例』と同じだ。
注意すべきは当然といえば当然だが、『全額』免除以外の場合は4分の1なり半額なり4分の3なり支払うべき保険料があるので、これを支払っていないとその期間は『未納』扱いになり、2年経過すると払うことができなくなる。
・ 申請の対象期間は2年1ヶ月前から、直後の6月まで
免除申請の対象となるのは、『申請した月の2年1ヶ月前の分から直後の6月分まで』となっている。
要は、その月に納付しなければならないのは前月分の保険料なので、2年2ヶ月前の分が未納でもその分は時効で納付できない。その翌月分はギリギリ時効にかかっていないので対象ということだ。
・ 基準となる所得は、6月までは前々年・7月以降は前年分
免除の基準たる『所得要件』はいつの所得かというと、免除の趣旨からいえば今現在の所得をもとにすべきかもしれないが、そんなものはまだ確定していないのでムリだ。
個人の所得を行政が知るのは、給与所得者なら年末調整の結果が報告される翌年1月末日・それ以外の方の分は確定申告の〆切日である翌年3月15日になる。
こうして確定には時間がかかるので、『所得』の基準年は、1~6月分については『前々年』、7~12月分については『前年』となっている。従って、6月にはまだ翌7月の基準所得が確定していないが7月になれば翌年6月まで1年間の基準所得が分かっているので、そこまでは、その方の所得が基準に収まっているか審査できるというわけだ。
次回は、この肝心カナメの『所得要件』の話になる。