前に、勤務時間6時間を超えたら45分休憩を取らなければならないことについては書いたが、休憩の原則は、
『6時間超えたら45分・8時間超えたら1時間、勤務時間の途中で一斉休憩。休憩時間は自由』
というものである。
1日の労働時間は原則8時間以内なので、これを忠実に守っている限り、1時間の休憩が必要になることはない。しかし8時間を1分でも超えると1時間必要になるし、45分では昼食を食べに行って帰ったら休む暇がないということもあってか、最初から1時間の休憩を設定していることが多いようだ。
・休憩に上限規制・回数制限はない
常に緊張感を保っていないと事故の危険がある建設業等は、昼に1時間・午前と午後に30分ずつ休憩を取り、連続勤務時間を2時間程度に抑えている会社は多い。人間の集中力の限界を考えたいい判断だと思う。
牧場等生き物を相手にする業種では、休憩を3~4時間取って、朝と夕方の忙しい時間に仕事を合わせているところは見られる。
この業種は法律上は労働時間の制限はないが、前に述べたように監督署の指導は『週48時間程度以内・週1休を確保』といったところなので、実質の所定労働時間は一般同様1日8時間程度が限度になる。大体、あまり勤務時間が長いと求職者が来ない。
休憩を4時間にして始業~終業まで12時間というのは一般の業種でも普通に可能なので採用している会社はあるが、始業~終業があまりに長いと健康にも良くなさそうだし、人も集まらない可能性が高いので、法的基準はないが、この4時間程度の休憩時間を限界と考えた方がよさそうだ。
・タバコ休憩は?
休憩自体は、休憩の趣旨を損なわない範囲であれば細切れでもよい。この話題になると、喫煙者の『無断休憩』が取りざたされることがある。
勤務時間中喫煙している時間が労働時間に入るか否かについては状況によって様々な判例があるのでここでは立ち入らない。
30年以上前なら机の上に1人1個灰皿が置いてあるのが普通だったが、今は建物内どころか敷地内禁煙のところが多く、恵まれた?職場であっても最低限、喫煙所までは移動しなければならない。
法律的にも、2015年から安衛法(68条の2)で受動喫煙防止の努力義務が事業者に課せられているし、他の法律ではさらに厳しい規制もある。
『無断休憩』は論外だが、今や完全なマイノリティーとなった喫煙者をこれ以上叩いてどうしようというのか…という気が個人的にはしないでもない。
それはともかく、ごく少数の喫煙者のことを思いやって、例えば午前と午後に2回ずつ7~8分の休憩をはさむとかはOKだ。ただ、この場合は合計1時間休憩とすれば、勤務時間8時間の場合、小休憩が4回・昼休憩がわずか30分となってしまう。
こんな細切れの休憩と短い昼休みのセットは大多数の非喫煙者には不評だろうから、両者の希望を叶えるには、たとえば、『昼1時間休憩』か『昼30分・他1日4回7~8分休憩』のどちらかを選んでもらうという方法もある。
ただ、この場合には『一斉休憩』にならないので、職種によっては次項の措置が必要になる。
もちろんそこまで気を使う義務も義理もないので、健康のためにも「勤務中はタバコは我慢してね!」というのがごく一般的な姿だろう。
一斉休憩の例外
休憩は原則として、全従業員一斉に与えなければならない。ただ、なかなかそうできない業種も多く存在するので、次の業種の場合は、元々『一斉付与の原則』は免除されている。
・休憩『一斉付与』の例外業種
・運輸交通業 ・商業 ・映画演劇業 ・通信業 ・保健衛生業
・接客娯楽業 ・官公署の事業(一部除く) ・坑内労働
ただし、これらの業種でも、その中に18才未満の『年少者』がいる場合には、その方については『一斉付与』の原則は免除されない。
たとえば『保健衛生業』の事業所に60人の従業員がいるとして、その中の2人が18才未満だとする。この場合、その2人の休憩は、一斉に与えなければならない。
何とも珍妙といえば珍妙だが、法はそう定めている。
・労使協定による『一斉休憩』の解除
前項の『一斉休憩の例外』業種以外で、一斉休憩でなくそれぞれが休憩を取るシステムにしたいと思ったら、労使協定を結ぶしかない。
労使協定を結んだ場合は、これら『例外』業種以外でも『一斉休憩』の原則を解除することができる。この労使協定については、36協定と違って監督署への届出も有効期間の定めも不要だ。
もう1つ、労使協定による一斉休憩解除の場合には、前項で『珍妙』と称した『一斉休憩』の例外業種での18才未満の年少者の例外(要するに、一斉休憩の例外業種でも一斉に休憩を与えなければならない状況)をも解除することができる。
つまり、一斉休憩を除外する労使協定は、一斉休憩の適用業種でも例外業種でも、年少者の一斉休憩の原則に関しては、これを無効にする効力があることになる。
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※ 一部加筆・訂正
・タバコ休憩
1行目 細切れでもよい ➡ 休憩の趣旨を損なわない範囲であれば細切れでもよい
10行目 『無断喫煙』 ➡ 『無断休憩』