保険料の支払いが必要なのは第1号被保険者
国民年金の被保険者には1号・2号・3号とあるが、直接保険料の支払いが必要なのは『第1号被保険者』だけだ。日常会話ではこの『第1号被保険者』になることを称して『国民年金に入る』と言うことも多い。
この『第1号被保険者』とは、法律上次のように定義されている(表現は変えてある。)。
・ 第1号被保険者
次の全ての要件を満たす者
① 日本国内に住所を有する
② 20才~59才
③ 厚生年金保険法に基づく老齢給付等を受けることができる者でない
④ 第2号被保険者・第3号被保険者でない
要件③の60才未満で老齢給付等を受けることができる方というのは、現在ではほとんどいないはずだ。
要件④『第2号被保険者・第3号被保険者でない』が非常にネガティブな表現で、2号・3号の何たるかを知らなければ分からない仕掛けになっている。そういうわけで2号・3号の定義も示す。
・ 第2号被保険者
厚生年金の被保険者。ただし、年金受給権を持つ65才以上の者を除く
・ 第3号被保険者
第2号被保険者の20才~59才の配偶者で、主として第2号被保険者の収入により生計を維持する者
・ 第1号被保険者の具体例
ということで、20才から59才で国民年金第2号被保険者でも第3号被保険者でない方は第1号被保険者になるので、原則として自分で、あるいは配偶者・世帯主と連帯して保険料を支払わなければならない。具体的には次のような方々だ。
① 個人事業者
② 社会保険に加入していない個人事業所の従業員
③ パート・アルバイトで厚生年金に加入していない方
④ 65才以上の会社員や役員に扶養される配偶者
⑤ 学生・無職・家事手伝い等の方(親の扶養に入っている方も含む)
ここで、④の『65才以上の会社員や役員に扶養される配偶者』というのはちょっと盲点かもしれない。
年金受給権のある65才以上の会社員等は厚生年金に加入していても上の『第2号被保険者』の定義から外れるので、会社員等が65才になるとその配偶者は『第3号被保険者』ではなくなる。その結果、保険料の支払いが必要になる。
夫婦の年齢差が5才以上の場合は頭に入れておこう。
・ 国民年金保険料は一律同額
一般の会社員等の厚生年金保険料は収入にほぼ比例して8,052円から59,475円まで32段階に細かく分かれているが、国民年金保険料は一律16,980円('24年度)と固定されている。
月給18万円の方の厚生年金保険料が本人16,470円なので、16,980円という金額は、独身で働いている場合は高すぎるとまでは言えないだろう。
ただし、厚生年金の場合は扶養配偶者の分は一部を除きタダだが『第1号被保険者』にそういう制度はないので、夫婦2人分なら年間40万円程度になり、収入によってはなかなか厳しい場合もあるだろう。
国民年金保険料免除・猶予制度の全体像
そこで、国民年金保険料については、前回紹介した『学生納付特例制度』なども含めて様々な免除・猶予制度がある。
・ 法定免除
・ 産前産後の期間中の免除
・ 申請による免除制度
・全額免除
・4分の3免除
・半額免除
・4分の1免除
・ 納付猶予制度(申請による)
・学生納付特例制度
・納付猶予制度
法定免除
法定免除は、申請によらず自動的に保険料免除となるもので、次の方々が対象になる。
この方々についても法律上は要件に該当してから14日以内に『国民年金保険料免除事由該当届』の提出は必要だが、これは免除の要件ではないので、提出が遅れてもそれぞれ『生活扶助を受け始めた日』・『認定された日』・『療養が始まった日』の前月から全額免除になる。
① 生活保護のうち、生活扶助を受けている方
国民の生存権確保の最後のセーフティーネットたる生活保護には、生活扶助・住宅扶助・教育扶助・医療扶助・介護扶助・出産扶助・生業扶助・葬祭扶助の8種類があるが、このうち『生活扶助』を受けている期間は、国民年金保険料は法定免除扱いになる。
法律上は『生活保護法による生活扶助その他の援助であって厚生労働省令で定めるものを受けるとき』は法定免除とされるが、この『その他の援助』には、住宅扶助・医療扶助…等ほかの7つの扶助は入らない。
これは条文の書き方に問題があるような気もするが、この条文は『生活保護法による生活扶助』で一旦区切ってから『その他の援助』とつながるようで、『生活扶助その他の援助であって…』とつなげて読んではいけないらしい。『その他の援助』として厚生労働省令に入るのは生活保護とは別の話になる。
② 障害基礎年金・2級以上の障害厚生年金の受給権がある方
障害基礎年金や2級以上の障害厚生年金を受給している方はもちろん、ほかに遺族年金の受給権もあってそちらを選択しているなど、何らかの理由で障害年金が支給停止になっている方も対象になる。
③ 国立ハンセン病療養所などで療養している方
『ハンセン病問題の解決の促進に関する法律』による援護を受けている方や、国立ハンセン病療養所・国立保養所など『厚生労働省令で定める施設』に入所している方がこれにあたる。
・ 老齢年金は国庫負担分だけ
これら法定免除の場合、免除期間分の老齢う基礎年金に関しては国庫負担分だけの支給になる。つまり満額保険料を納付したときの半額になる。
ただし、障害基礎年金を受給する方が65才になれば普通老齢基礎年金の受給権も確かに発生するが、この場合はどちらか選択になる。障害基礎年金は2級で老齢基礎年金の満額と同じなので、通常は老齢基礎年金は選択しない。
従ってあまり心配はないが、障害の種類によっては障害が軽快して障害年金が打ち切られることもあるので、その場合は65才以降の年金が想定より激減する可能性はある。また、老齢基礎年金に加算が付いて障害基礎年金を上回ることもないわけではない。
生活扶助の場合も、その事由が消滅して扶助から脱したときには同じことが起こる。
・ 法定免除でも、任意の納付は可能だが…
そのため法定免除に該当しても、本人の申出により保険料を納付することは可能となっている。
ただ、その納付が実際の支給額に反映されるのは障害が確実に軽快に向かっているなどごく一部の場合だし、こうした『免除』期間は未納と違って10年間は追納可能。(いい意味で)イザとなったら60才から64才までは『任意加入』もできる。
つまりバッファ(後から納付できる期間)が最大15年分はあることになるので、たまたま手元にお金があっても納付を申し出るのはよく考えてからにした方がいい。