92.パート労働者の年休付与日数



『6ヶ月継続勤務・出勤率8割以上の場合、年10日の年次有給休暇を与える』のは、通常の労働者の場合だ。
 ここで、『通常の労働者』とは、
 

所定労働日数が週5日以上または所定労働時間が週30時間以上

 

の方をいう。
 

週5時間でも『通常の労働者』

 
 たまに、清掃や新聞配達の仕事などで「1日1時間・週5日勤務でも通常の労働者扱いなの?」と驚かれる方がいるが、その通り。

 雇用保険の加入基準にも遠く及ばない週5時間勤務のアルバイトでも、こういう雇用形態なら(年次有給休暇の付与基準上は)『通常の労働者』であり、原則通り6ヶ月継続勤務で年休を10日付与しなければならない。

 もっともこの場合は、1日の所定労働時間が1時間なので、年休1日当たり1時間分の付与となり、特段の違和感はない。

 また、『週5日以上または週30時間以上』なら『通常の労働者』なので、1日7時間半・週4日勤務(週30時間)でも、通常の労働者扱いとなる。週30時間というと小規模企業でも社会保険加入となるので、こちらの場合はみなさん納得できると思う。
 

週4日以内・30時間未満なら『比例付与』

 
 もちろん『通常の労働者』以外の方、つまり、
 

所定労働日数が週4日以下、かつ、所定労働時間が週30時間未満


の方にも年次有給休暇はある。前提条件の
 

『6ヶ月継続勤務・出勤率8割以上』


に関しては通常の労働者と同じだ。しかし付与日数については、通常の労働者と同じだとかえって不公平になるので、『比例付与』という形になる。

 何が比例かというと、通常の労働者の週所定労働日数が平均5.2日ということになっているので、これに対して週1~4日の労働者の年次有給休暇日数を、これに比例させて付与するということだ。

 たとえば、入社6ヶ月目の付与日数について比例計算すると、通常の労働者の付与日数が10日なので、週4日・3日・2日・1日の場合、

『 10日 ÷ 5.2日 × 週所定労働日数 』 は、
 

   週4日  10日 ÷ 5.2日 × 4日 = 7.69…
   週3日  10日 ÷ 5.2日 × 3日 = 5.76…
   週2日  10日 ÷ 5.2日 × 2日 = 3.84…
   週1日  10日 ÷ 5.2日 × 1日 = 1.92…


となるが、厚労省の示す『付与日数』ではすべて切捨てて、それぞれ7日・5日・3日・1日としている。1年半後~の付与日数についても同様だ。労働法において厚労省の示す数値がすべて切捨てという例はなかなかない。

 《四捨五入にしてあげてもよかったんじゃないの?》とも思うが、ここに『比例付与の労働者を、通常の労働者より有利に扱うわけにはいかない』という、厚労省の姿勢を見ることができる?

 通常の労働者とパートの方の付与日数をまとめると、次のようになる。
 

週所定労働日数  6ヶ月 1年半  2年半  3年半  4年半  5年半 6年半
(通常の労働者) 10日  11日  12日  14日  16日  18日  20日
   週4日    7日   8日   9日  10日  12日  13日  15日
   週3日    5日   6日   6日   8日   9日  10日  11日
   週2日    3日   4日   4日   5日   6日   6日   7日
   週1日    1日   2日   2日   2日   3日   3日   3日
 

シフト勤務者の年休付与日数

 
 週の所定労働日数がバラバラなシフト勤務者の年休付与日数はどうするか。
 実は、厚労省は先の比例付与の表に、年間所定労働日数も載せていて、48日以上で週1日・73日以上で週2日・121日以上で週3日・169日以上で週4日・217日以上は通常の労働者として先の表を適用するよう指示している。

 これは『所定』労働日数なので、実際の労働日数が所定労働日数の8割以上であれば、所定労働日数に対応した日数を付与すればよい。

 つまり、今後1年間の所定労働日数により、例えばそれが3年半経過時で年間135日ならば週3日と判断し、8日付与することになる。

 所定労働日数が分からないということは本来あってはならないことだが、従業員と話し合ってシフトを決め、欠勤がなかったのであれば(年休取得はあってよい)、出勤率は10割だ。

 また、最初の6ヶ月目の付与で、付与時点での所定労働日数・時間等の雇用条件が入社当時と変わっていなければ、その6ヶ月の所定労働日数により、比例計算で24日以上で週1日・37日以上で週2日・61日以上で週3日・85日以上で週4日として、さらに109日以上は通常の労働者として、先の表を適用して日数を算出することになる。

 ただし、この『6ヶ月間の日数』については厚労省から出されているものではない。
 まとめると、次表のようになる。
 

          所定労働日数         週所定労働日数
      1年間       (6ヶ月間)
    48日 ~ 72日    ( 24日 ~ 36日 )     週1日
    73日 ~ 120日    ( 37日 ~ 60日 )     週2日
   121日 ~ 168日    ( 61日 ~ 84日 )     週3日
   169日 ~ 216日    ( 85日 ~ 108日 )    週4日
   217日 ~       (109日 ~ )     通常の労働者


 たとえば、週1日程度のシフト勤務のアルバイトで4月1日に入社し、その後6ヶ月間に24日のシフトが入り、そのうち20日出勤したとする。

 この場合は、出勤率は83%なので、その年の10月1日(基準日)にその条件が変わっていなければ、そこで『1日』の年次有給休暇を付与することになる。

 

次 93.シフト勤務者の年休取得の運用 ー

 

※ 訂正
シフト勤務者の年休付与日数
11行目 所定労度日数 ➡ 所定労働日数  '23.10.21
週5時間でも『通常の労働者』
6行目 付与なので ➡ 付与となり    '23.10.31

 

2023年10月20日