₁₄₇.どこまで対象?税と社会保険の扶養の範囲



社会保険では、『扶養』の範囲が違う

 
 実務的にはこの扶養親族の範囲が問題になることはあまりないが、理屈の上では最も重要ということになる。
 

・ 税法上の『扶養親族』は、ほぼ民法の『親族』

 
 税法上の扶養親族はほぼ民法と同じ

6親等内の血族・3親等内の姻族

となっている。
 ただし、配偶者の税の控除については扱いが複雑なので、次回触れる。
 また、年末年齢15才以下の『年少扶養親族』は扶養親族であるのは当然だが、『児童手当』との関係で扶養控除の対象にはならない。

 現役の就業者が4代以上離れた直系の親族(祖父母の祖父母《高祖父母》以上・やしゃご《玄孫》以下)を扶養しているのはギネス級の例外と思うので、現実的に考えるとギリギリ扶養控除の対象となり得るのは、

・ はとこ         6親等の血族
・ 祖父母のいとこ       “
・ 配偶者のおじ・おば   3親等の姻族
・ 配偶者の甥・姪       ‘’
・ おじ・おばの配偶者     ‘’
・ 甥・姪の配偶者       ‘’

 までということになる。いとこの配偶者(4親等の姻族)や、配偶者の兄弟の配偶者(姻族の姻族)などはダメだ。
 この範疇(はんちゅう)であれば同居・別居は問わないが、30~69才で国外居住の場合は要件が厳しくなる。
 

・ 社会保険の扶養は、同居・別居で範囲が違う

 
 社会保険の扶養の範囲は『主として被保険者により生計を維持する者』を前提として、同居と別居(正確には『同一世帯』か否か)で範囲が違う。

① 同居・別居を問わず対象となる被扶養者

ア.直系尊属
イ.配偶者(事実婚の場合も可。以下同じ)
ウ.子・孫
エ.兄弟姉妹

については同居別居を問わず対象になる。

 余談だが、このうちの兄と姉については10年ほど前に法改正で加えられたもので、その前は『同一世帯』でなければ認められなかった。別居の場合たとえ双子でも、弟妹は兄姉の扶養には入れても兄姉は弟妹の扶養には入れなかったのだ。

 あと、最近はご高齢でも(といっても74才までになるが)現役で働く方も多いが、孫は扶養にできてもその子(ひ孫)は同居でないと入れられないのでご注意。

 次の方々は被保険者と『同一世帯』であることが要件となっている。

② 『同一世帯』限定の被扶養者

ア.①以外の、3親等内の親族(血族・姻族を問わない)
イ.事実婚の配偶者の父母および子
ウ.事実婚の配偶者の死亡後におけるその父母および子

 ここでの『親族』とは戸籍上の関係をいうので、これだけでは事実婚の配偶者の親族は入らない。そこでで、事実婚の配偶者の父母と子を別枠で救済している。

 見方を変えると、法律上の配偶者の祖父母や孫・兄弟は『2親等の親族』なので同一世帯ならにより被扶養者とし得るが、事実婚の配偶者の祖父母・孫・兄弟はのどれにも該当しないのでダメということになる。
 

個別の事情は、税は項目社会保険は限度額で配慮

 
 老齢や障害などの個別の事情は扶養の認定にあたっても配慮されるが、配慮の仕方が税と社会保険では違う。
 

・ 社会保険の扶養 60才以上・障害者は180万円未満まで

 
 ここまで社会保険の扶養認定の限度は収入『130万円未満』と説明してきたが、老齢・障害の方については50万円プラスして『180万円未満』の収入であれば扶養を認めている。具体的には次の方々だ。

・ 60才以上の方
・ 障害厚生年金を受けられる程度の障害者

 『今どき60才で老齢?』と思うだろうが、ここは有利に扱われるのだから怒るところではない。
 2つ目の『障害厚生年金を受けられる程度の障害者』とは、あくまで障害の程度について言っているので、障害厚生年金を現に受けている必要はない。障害厚生年金は初診日に被保険者でないと支給されないので、障害基礎年金だけの方もたくさんいる。

 障害年金の1級・2級の『障害の程度』は、厚生年金も基礎年金も同じなので、障害基礎年金を受けている方は必ず対象になる。ただし障害者手帳の等級とは別物なので、そこは混同しないようにしたい。
 

・ 障害年金『受給』が要件ではない

  さらに、障害年金を受給していなくても対象となる場合はある。
 まず当然だが、基礎年金は2級までだが厚生年金は3級まであるので、障害厚生年金3級程度の障害なら基礎年金は出ないが、この場合も対象だ。

 また、障害年金のほかに遺族年金の受給権もあって遺族年金を選択したという場合も対象だし、保険料の納付要件等の関係で(どこかで書きます。)受給権がない場合でも『障害厚生年金を受けられる程度の』障害があれば対象になる。
 

・ 扶養控除は、障害者控除・『老人扶養親族』等で対応

 
 これに対して税の扶養控除は主に、それぞれの事情によって控除の項目を設けることで、個別の事情に対応している。
 

① 障害者の控除

 被扶養者が障害を持つ場合は、状況によって『障害者控除』27万円・『特別障害者控除』40万円・『同居特別障害者控除』75万円などを追加することで対応する。
 ただしこれについては、次回予定の『配偶者特別控除』の対象者など、所得48万円超の場合は適用はない。

② 老人扶養親族等の控除

 70才以上の扶養親族については一般の38万円ではなく48万円の控除が適用になる。その方が『同居老親等』に該当すれば控除額は58万円になる。
 ここは『老人扱い』が70才以上と、社会保険の扶養優遇年齢よりは10才年上になる。

③ 特定扶養親族の控除

 年末時点の年齢が19才~22才の扶養親族については控除額が63万円となる。これは扶養費用が他の年代に比べてかかることに対応したもので、税制独自の制度だ。

 

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2024年05月31日