₁₃₃.文字通り『日割』の欠勤控除



欠勤控除の方法③・日額固定には限界が…

 
 前回まで書いたように『基礎賃金』を基にした場合だけでなく、欠勤した場合に控除する金額を『1日当たり』あるいは『1時間当たり』で固定する方法は、計算が簡単というメリットがある。

 ただ、ここで『計算が簡単』というのは、主に、単価が確定しているので『給与ソフトとは相性が良い』という意味だ。

 市販の給与ソフトでは大体、日額単価を設定しておくと欠勤があったときにその日数を入れれば自動的に欠勤控除額が表示されるようになっているので、そうでない欠勤控除法を取る場合は設定が複雑になるか、別計算して手入力しなければならなくなる。工程が多少複雑になるのだ。

 さて『日額固定方式』は、そういった意味で計算が簡単な反面、欠勤日数と出勤日数が拮抗するような場合には支給額との整合性を確保するのが難しくなる。
 

・ 『日割』は原始的か?

 
 そこで登場するのが、その月の所定労働日数で割る文字通りの『日割』の方法だ。

 この方法は、月ごとの『所定労働日数』で所定の給与や手当を割り、その月の日割り単価を求め、欠勤日数分引いていくというある意味『原始的』な方法だ。
 ただ、欠勤している月であり、皆勤手当は支払われないのが普通なので、この分は『所定の給与や手当』から除外するのがいいだろう。
 また、通勤手当は非課税枠の関係で別計算とすべきだ。

 ここではまた、給与構成が単純な前回の姫川さんの例で考える。
 日割りするもとの給与は『月給30万円』だけなので、
 

① 所定労働日数18日の月であれば、

 300,000円 ÷ 18日 = 16,666.666円/日 ➡ 16,666円/日

が日割単価だ。時間単価なら2,083円/h(16,666円÷8h)だ。
 この月に、姫川さんが17日欠勤(1日出勤)したのであれば、

300,000円 ー 16,666円/日 × 17日 = 16,678円

が、支給金額になる。
 

② 所定労働日数23日の月であれば、

300,000円 ÷ 23日 = 13,043.478…円 ➡ 13,043円/日

が日割単価になるので、
 この月に姫川さんが同じく17日欠勤(6日出勤)したとすれば、

300,000円 ー 14,043円/日 × 17日 = 78,269円

の支給となる。
 

③ ちなみに②と同じ所定23日の月に22日欠勤(1日出勤)した場合は、

日割単価は②と同じく 13,043円/日 なので、

300,000円 ー 13,043円/日 × 22日 = 13,054円

の支給だ。
 

日割の欠勤控除額

 
 表にまとめると、欠勤控除額は次のようになる(〇数字は出勤日数)。

月の所定労働日数

  18日 19日 20日 21日 22日 23日
1日 16,666⑰ 15,789⑱ 15,000⑲ 14,285⑳ 13,636㉑ 13,043㉒
2日 33,332⑯ 31,578⑰ 30,000⑱ 28,570⑲ 27,272⑳ 26,086㉑
3日 49,998⑮ 47,367⑯ 45,000⑰ 42,855⑱ 40,908⑲ 39,129⑳
4日 66,664⑭ 63,156⑮ 60,000⑯ 57,140⑰ 54,544⑱ 52,172⑲
17日 283,322① 268,413② 255,000③ 242,845④ 231,812⑤ 221,731⑥
18日 299,988⓪ 284,202① 270,000② 257,130③ 245,448④ 234,774⑤
19日   299,991⓪ 285,000① 271,415② 259,084③ 247,817④
20日     300,000⓪ 285,700① 272,720② 260,860③
21日       299,985⓪ 286,356① 273,903②
22日         299,992⓪ 286,946①
23日           299,989⓪

欠勤日数

 メリットは、欠勤日数が多くても少なくても、その月の所定労働日数が多くても少なくてもほぼ妥当な金額が出るということだ。

 実際、この方法で運用した場合、支給される給与としては、欠勤控除して算出しても出勤日数で算出しても、円未満を端数処理した影響の範囲でしか差は出ない。

 その辺の誤差の影響を示す意味もあって月の全部を欠勤した場合の控除額も計算結果そのままで載せたが、これはあくまで『日割』計算なので、『日割』する必要のない全部欠勤の場合は『総支給額0円』でよい。

 また、『日額単価』を求めてから欠勤日数分をかけて控除額を求める方法が一般的的なので、ここではその方法をとったが、何度も言うように欠勤控除方法は基本的に会社に任されているので、たとえば、所定労働日数22日の月に17日欠勤した場合、直接

300,000円 ÷ 22日 × 17日 ≒ 231,818円

控除する方法でもよく、表のこの欄とは6円のズレがあるが、むしろこの231,818円の方が正確とも言える。
 

日割単価がバラバラなのは、月給の宿命

 
 ・ デメリット① 日割単価がバラバラ

 
 デメリットの第1は、日割単価がその月の所定労働日数によってバラバラになることだ。
 『月給30万円』の姫川さんの場合、同じように1日欠勤しても欠勤控除額はある月は16,666円になりまたある月は13,043円になる。これは人によっては違和感があるかも知れない。

 しかし、これは月給制という制度そのものに内在する矛盾といえる。所定労働日数18日の月と23日の月の給与が同じになる『月給』という支払方法をとっている以上、やむを得ない事態なのだ。

 実際、所定18日の月の日割単価は同23日の月の1.28倍になる。1.28倍というと、法定時間外の割増賃金率1.25倍を超える。割増賃金並みの差が元々あるのだ。それが顕在化するに過ぎない。

  その点を、会社側にも従業員側にも割り切って考えてもらえば、『日額固定型』のようにその月ごとの所定労働日数や欠勤日数といったパラメータによって破綻が来るようなこともなく、これ一本で押し通すこともできる汎用性の高い方法と言えなくもない。
 

・ デメリット② 日額単価の計算がちょっと大変

 
 デメリットの第2は、何といっても毎回単価を計算し直さなければならない点だ。計算式は前述したように難しくはないが、使用する給与ソフトによっては毎回控除額を手計算して打ち込む必要が出てくるので、その点はちょっと面倒になる。

 

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2024年04月05日