欠勤控除って何?
『欠勤控除』という言葉は一般的に使われている。
『欠勤』とは、一般に労働者の都合で要勤務日に勤務しないことをいう。この場合、ノーワークノーペイの原則により給与は支払われないのが普通だ。
年次有給休暇を取らずに(入社6ヶ月以内でまだ付与されていない場合・年休を使い切った場合も含める。)会社を休んだ場合が典型だ。
この場合、時給や日給の方なら普通その日の給与が出なくなるだけだが、月給(や年俸)の方ならその分給与を差引く必要がある。
さらに、時給・日給の方であっても『資格手当』等、一定の月額の手当があるのなら、手当の内容によっては『欠勤控除』の対象になるだろう。
また、〆日翌日以外の日に入社したり、〆日以外の日に退職した場合、要は半端な時期に入退社した場合は、入社日や離職日を含む賃金計算期間が1ヶ月に満たないため日割り計算をする場合が多いだろう(社内規定で満額支給するのは大変結構なことで何ら問題はない。)。
ここではそういった場合の給与計算方法をも含めて考える。
ただ、最後の例で言うと、入社日前や離職日後は勤務できない(勤務しようがない)ので要勤務日ではない。在籍していないのだから当たり前だ。要勤務日でない日に欠勤はあり得ない。
この場合、当人によく説明せずに『欠勤控除』すると、「俺は欠勤なんかしていない!」と物議をかもされる恐れがある。人間は感情の動物なので、その辺の配慮も必要だろう。
正しくは『不就労控除』か?
また、日割り計算する中で、休日の扱いがどうしても問題になる場合がある。同じ理由で、会社休日にも欠勤はあり得ない。
単なる言葉の問題とも言えるので、就業規則等で共通理解が図られている場合には問題ないが、そういった誤解を避ける意味では、要勤務日でない日を含めて考える場合は正しくは『不就労控除』とすべきところかもしれないが、あまり一般的でないのでここではそうした場合も含めて『欠勤控除』と表記する。
法定の『欠勤控除』の方法はない
実は、割増賃金や年休時の給与の計算方法と違って、欠勤控除について書かれた法律はない。法の範囲内であれば、それぞれ社内ルールにのっとって運用して構わない。
だからこそ、実務的にも様々な欠勤控除方法のバリエーションがあるのだが、ここでは以後何回かに分けて、それぞれの方法のメリット・デメリットを考える。
ただ、その前に、どんな欠勤控除のルールをとるにしても、変えられない基準というものは存在するので、今回はその辺を考えてみる。
・ 端数処理は切捨て
欠勤控除は社内ルールにのっとって運用していれば問題ないと書いた。これから見ていくように、この『社内ルール』によって控除額にかなりの違いが出てくるので、(ずいぶんアバウトだな…)と感じるかもしれないが、控除額については『円未満の端数切捨て』とこちらはずいぶん細かく決まっている。
要は、控除額を計算するところまでは社内ルールでよい(というより法定の方法はないのでそれしかないのだ)が、その金額が決定した以上、それを超える金額を控除することは理屈上たとえ1銭でも給与の『全額払いの原則』( ー 85.給与全額払いの原則と例外 ー )に違反するということになる。
つまり、社内ルールでその方の給与控除額がたとえば9,999.98円と算出されたのなら、これを四捨五入して10,000円とすると、2銭分本来の支給額より少なくなるので、9,999円控除にしないとダメ。ということだ。
給与の支給は切上げが原則だが、逆に給与の控除額は切捨てが原則になる。
・ 遅刻・早退等は分単位
欠勤控除には1日単位だけでなく、時間単位・分単位のものもある、年休を取らずに遅刻・早退した場合等になるが、この場合も考え方は全く同じだ。
欠勤控除のバリエーションは様々だが、自社のルールで計算した1日当たりの欠勤控除額を、時間単位であればその日の所定労働時間で、分単位であればさらにそれを60で割って欠勤控除額を求めることになる。
当Blogの読者の方には言わずもがなだと思うが、ここで欠勤した時間(time)を1時間単位に切上げたり四捨五入するのはOUTだ。
たとえば、1時間50分遅刻した場合、これを四捨五入して2時間とはできない。
仮に、その方の欠勤控除額が計算の結果1日当たり10,000円で、所定労働時間が8時間だとすると、欠勤控除額は、
・ 1時間当たり 10,000円/日 ÷ 8h/日 = 1,250円/h
・ 1分当たり 1,250円/h ÷ 60分/h = 20.833…円/分
になるので、その方のその日の欠勤控除額は
1,250円/h × 1h + 20.833…円/分 × 50分 = 2,291.666…円 ➡ 2,291円
となる。
ここで、就業規則等で無断遅刻の場合は減給の制裁となりえることがルール化していれば、ー ₁₂₃.平均賃金を使うとき⑤・減給の制裁限度額 ー で書いた『限度額』の範囲内で減給処分とすることは可能となり得るが、それは全く別の話だ。
最低賃金は下回れない
次回以降詳しく見ていくが、会社の規定通り欠勤控除額を計算すると、出勤した日の給与が最低賃金を下回ることがある。これをそのまま支給すると最低賃金法に違反してしまうので、この場合は少なくともとりあえず最低賃金額は支給しなければならない。
社内規定に従って控除額を算定した結果こうなる場合は、就業規則等を改正する必要があることが多い。もちろんここでの『出勤した日の給与』は、― 36.最低賃金との比較計算 ー で書いた最低賃金と比較すべき金額だけで算定しなければならない。